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2008年5月

2008年5月30日 (金)

Blur

< 2003. 05. 09 @ The Astoria, London >

Blur というバンドをロンドンで初めて観たのはいつだったのか、忘れてしまった。確か、彼らのファーストアルバムが出た直後だったことだけ覚えている。それと、もうひとつだけ覚えているのは、それがロンドン北部のキルバーンだったか、ケンティッシュ・タウンのどちらかにあった、それなりにキャパシティがある会場で、その建物自体が残っているかはともかく、その名前のライブ・ベニューはもうとっくになくなってしまった、ということだ。

このバンド、時は流れてご存知のようにギタリストがなんとなく消えてしまい、しばらくライブを行なっていなかった時期があった。2003年になって、新作を引っさげ、どこからかギタリストを調達し久しぶりのライブステージを行なう、と発表されたのが、この「The Astoria 4夜連続公演」であった。当然のように、チケットは発売日当日に完売してしまったが、オレはこのバンドが心機一転、久しぶりのステージにここ The Astoria を選んだことにはたいへん好感が持てた。

この会場は、言うまでもなく彼ら Blur にとってはキャパシティがそんなに大きいわけではない(確か2,000人ほど)。どこから観てもたいがいステージ上の彼らの動きはよくわかるのため、ファンとしてはありがたい。何かあればすぐアリーナや公園特設会場でライブをおこなってしまうような、サイズ至上主義の大物連中とは基本的な考え方が違って見えるわけだ。多くのファンに楽しむ場を提供するために、小さなところで繰り返し演奏することを選ぶひたむきさと決意を感じたのである。

もうひとつ、The Astoria であってよかったこと。それはやはりここが、ロンドンのなかでももっともライブミュージック・ベニューらしいベニューである点だ。

歴史もあり、音楽好きの人たちから最も愛されている場所。名を馳せたバンドでここを通過しなかった連中はかつていないであろう、と思われる、まさに『聖地』だ。そしてもちろん「聖地」であるが故の、小汚さ、不良のたまり場感、酔っ払いの喧嘩、同じビルに入っているエロビデオ屋、などといった雰囲気全体が「ちょっと危険な感じ」と、それゆえに「落ち着ける人には落ち着けるカンジ」がない交ぜになった独特の雰囲気をかもし出しているのである。徹底して「英国」を歌ったこのバンドには、ここ The Astoria はとても似つかわしい場所なのだ、と思わせるような良いライブを観ることができた夜だった。

ところで、ここ The Astoria の取り壊しが決定し、営業が終了する。地区の再開発と地下鉄新線の重層化で、今の建物が生き残れなくなったためである。当時市長だったケン・リビングストン氏が今年3月に発表したのだが、35,000名に上る、取り壊し予定撤回嘆願署名も効果がなかったようだ。周辺が再開発され、The Astoria の代わりには近くに大きなハコ(ライブ・ベニュー)ができるという。

先日のロンドン市長選挙で、彼が再選ならずに落選したのは、この決定が不評だったからではと思わせるほど、各種ニュース・サイトのコメント欄には怒りと落胆のメッセージが並んでいた。オレもとても残念だ。ライブ道を求道する中で発見した真理のひとつは、「キレイな、ま新しい会場でのライブはつまらない。」というものである。フロア、客層、バー・カウンターなど、そういった要素も含めて「ライブ」としてダメになっていくのである。

Blur はその後フェスティバルでも姿を見かけたが、単体のライブを観にいくことは今後もうないような気がする。彼らのことはロンドンで観る、という贅沢をしたいのだが、このバンドが似合う、オレにとって適当なサイズの会場が今はもう思いつかない。

キルバーンだか、ケンティッシュ・タウンだかのライブ会場と同様に、The Astoria の思いでも 時とともに風化してしまうのかと思うと、すこしさびしいものがある。

Astoria_2

The Astoria Theatre。

地下併設のMeanfiddler (旧Astoria 2)も閉鎖。この辺、夜はクルマ止めづらかったなあ。路上空きスペースを探しているうちにライブが終了したことが一度ありました。

● Blur その2

2008年5月28日 (水)

Lovvers

< 2008. 04. 19 @ The Bullet Bar, London (Camden Crawl '08) >

ライブハウスでバンドの出番を待っているとき、パイント・ビール以外の楽しみと言えば「人間観察」と、相場が決まっている。

友人と話しこんでいるような状況であればともかく、「おい、次のバンドいいかげんに出てこないのかよ~。」などと文句をたれているようなとき、周りの人間に目が奪われて時がたつのを忘れてしまうのはなかなか都合が良い。

以前、「フェスティバルの見もの」としても書いたことがあるが、こういったとき一番の大当たりは断然薬物摂取過剰者による、本能のおもむくままの不思議な踊りである。良い踊りが見られた日は、バンドの出来の良し悪しに関わらず、充実感が高い。当然ライブハウスでもお見かけはするのだが、そもそも開放感に浸っている屋外フェスティバルとは違って、豪快な「大物」ダンサーの出現率は必ずしも高くない。ダイナミックさには多少欠けるが、女性の「キマリ・ダンサー」は、個性豊かな踊りが多く、発見が難しい分意外と楽しめる物件だ。万一目が合うと、呪われること請け合いである。

そのほかに目をひくものとして、これはちょっと差別的な話になってしまうので書き方が難しいのだが、「太った英国人女性」というのがある。ある統計によると、欧州各国の中で、他の国を大きく引きはなして圧倒的に肥満率が高いのがここイギリスだそうだ。ドイツ人やオランダ人のように、そもそも背が高かったり、作りがでかかったりするのではなく、後天的に肥満体を手に入れやすい人たち、と言えるだろう。

我々が注目したいのは、病的に極端に太った人たちではなく、オレを含めて貧相な日本人からみれば、明らかな「ふとりすぎ」なのだが、本人たちにはその意識の微塵もないと思われる方々の群れである。そいいう風情に限って、ライブハウス内で周りの男性客に色目を使い(黄色いサルである、オレのことは当然見えていない)、本当は今日出演のインディバンドには興味が全くないのではないか、と思われるような、セクシー風振り付けの踊りやステップを踏みながら、次のバンドの登場を待っているのである。なんじゃ、こりゃ。

オレはというと、こういう輩が場所を侵食してくるために(物理的な幅が厚いので、どんどんオレのいるスペースが小さくなる)不機嫌になって文句を垂れ流すのだが、一方ではコイツの観察と、これに対する愚痴も楽しみと言えば楽しみだ。よってバンドの待ち時間がつぶれるために、痛し痒しのところもある。悪趣味かもしれないけど。

さて先日、ここのところ各方面から名前が聞こえてくるようになってきたノッチンガム出身のパンクバンド Lovvers の演奏が始まるのを待っていたときだった。www.myspace.com/letscommunicate 

オレはバンドの演奏が始まるのを、いつものようにビールを飲みながら待っていた。都合よく、後ろのほうでは中くらいにキマッた薬物ダンサー(ややおっさん。オレより若め)の発生だ。彼はかなりフツーの見かけであると同時に、分別のありそうな年齢3人組のうちの一人であったため、踊りが「本能化」してくるに従って、残りの2人が周りに対してちょっと恥ずかしそうに見える。そう、仲間のうち一人が「キマリ・ダンス」を踊りだしてしまったために、困っている人たち、というのを観察するのもこういった時間つぶしにおいては高得点のアトラクションである。いままで一緒に談笑していたために、急に他人のふりをするわけにもいかないのであろう。

さて、そうこうするうちに薬物の効力も衰え、おっさんの踊りにもかげりが見え始めた。我々の住むフツーの世界に帰ってきてしまったのである。こうなると、オレはビールを飲みながら次なるターゲットを探し出した。程なくしてオーディエンス・スペース真後ろ5メートルほどに、不思議な動きをする男を発見したのである。

この男はとりあえず手をじたばたさせているので、最初はやはり、「ケミカル・ダンサー」かと思ったのだが、どうも様子が違う。よく見ると、こいつはず~っと腕のストレッチをしているのである。カラダをストレッチしたところでどういうこともないかとお思いでしょうが、場所柄を考えると、相当変です。休むことを知らない、腕の曲げ伸ばし。人々がビールを買ったりおしゃべりをする場所で、なぜこの方だけ肘まで背中に回して延々と運動を続けるのか。たしかに友人と思わしきやつらと談笑もしているのだが、このストイック男はストレッチを止める気配がない。あまりにも不思議な存在ではあったが、運動時間が長すぎて、一瞬目を離したスキに見失ってしまった。オレの出した結論は、『酒が入ると、運動したくなる人』ということだが、そんなヤツは生まれて初めて見た。

程なくしてバンドのステージが始まったので、良い時間つぶしを提供してくれたこのストレッチマンにオレは感謝した。しかしその1秒後、そのストレッチマンは、Lovvers のボーカリストとして再びオレの前に現れた。出会い、別れ、そして再会である。

十分すぎるほどの準備運動が功を奏してか、コイツの動きは軽やかだ。軽やか過ぎて、オレの大嫌いな「ステージを降りて、客に歌いかけ」まで行なう始末である。オレ自身は前から2列目という絶体絶命のポジションながら、念力でなんとか難を逃れたが、多くの無垢の若者がこの「歌いかけ」の犠牲になっていたのは傷ましいかぎりであった。

前評判ほどにはたいしたことのない連中ではあったが、ステージ登壇前に前にじっくりと準備運動を行なうあたりが刹那的に無鉄砲な人生を送りがちなパンクスとは一線を画している気がした。パンクとしてそれで良いのか、という疑問は今でも消えていないが。

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@ The Bullet Bar

手前がストレッチマン。まさに「歌いかけ」の直前を捉えた写真だ。よく考えたら準備体操くらいしてもいいんだけど、なんで公衆の面前で延々と行ない続けるわけですか?

2008年5月27日 (火)

Crystal Castles

< 2008. 04. 18 @ Purple Turtle, London (Camden Crawl '08) >

あまり真剣に語る話でもないが、「比較人種論」すなわち「ガイジンはここがおかしいよな~」という与太話は、酒の肴には最適である。

イギリスに暮らしてイギリス人と10年近くも付き合ってきて、感銘を受けた筆頭はやはり「傘をささない」ということだろう。一度決して弱くない雨足(あまあし)の中、みすぼらしくもずぶぬれで歩いている弱々しい英国人のバアさんとすれ違ったのだが、さすがにこのときだけはオレの差していた安傘をこのバアさんにくれてやるのが人の道だろうと思って、一瞬立ち止まった。

ところが、よく見るとこのバアさんというかご婦人は、雨に打たれながらも自前の傘を開かずに手に持ちながら、のしのしと歩いているのであった。「こっ、これはもしかしたらオレの負けか?・・。」とつぶやきながら、まだこの国のことが何もわかっていなかった自分の甘さを悟ったものである。

あともうひとつ、英国人に対して心底ひねくれたキモチなしに尊敬できるのは、そして自分にはとうていできないだろうなあと思うのは、一向に前に進まない行列に対して何一つ文句を言わずに永遠に並んで待ち続けることができることである。先日のエントリーで「列に並ぶ英国人」という話を書いたが、彼らは日本人同様「列を作れる」数少ない人種であると同時に、ここが日本人とは決定的に違うのだが、その列が前に進まないことに対してイラついたりネガティブなキモチになったりすることがないのである。そしてときには、そうして列に並ぶことだけが目的化しているのではないか、楽しみのために並んでいるのではないか、と本末転倒な錯覚さえオレに起こさせることになるのである。

さて、Camden Crawl や The Great Escape などのショーケースイベントのもつ決定的な弱点はというと、それぞれの会場が小さなライブハウスであり、よってキャパシティも小さいために、人気者が演奏するとなるとその会場はすぐに満杯になってしまうということにある。満員御礼になってしまった会場は、当然ながらセキュリティ・ガードが入場制限をかけるわけだが、入り口はなんとかそこに入りたい人間たちが長蛇の列を作ることになる。基本的に1アウト・1イン、すなわち会場から一人外へ出ればその代わりに列の先頭1名が入場できるというのがルールの原則だ。

自分も経験者なので外で待っている人間の心情を代弁すれば、とにかく今演奏中の、つまり自分がなんとしても観たいと思ってここで待っているバンドをはたして一瞬でもかいま見ることができるかどうか、なんとか人が少しでも外に出てくれて、自分の入場分の空きが出るかどうか、とにかくも固唾を呑んで念力を発しながら入り口を凝視しているわけだ。

だいたいこういうときオレは、かなり「お恨みもうしあげますう~。(意味不明)」という顔つきをしながら、会場の中にいるやつらを一人でも外へ追い出す呪文を唱えるのが常なのだが、ふと辺りを見回すと、みな比較的ニコニコしながら談笑しているケースが多い。

一昨年の Camden Crawl で、オレは移動途中に長蛇の列を作っているライブハウスを通り過ぎたのだが、そこの小バコではあとから調べるとゲスト格 のSupergrass が演奏しており、どう考えても演奏終了まで誰も会場から出てこないであろう事は容易に想像がついた。にもかかわらず、入り口では多くの人間が一寸の希望の光もない中、自暴自棄になることなく決して動くことのない列を形成していたのである。

これは日常いつも目にする「切手一枚買うために、ひとつしかあいていない郵便局の窓口の40人の列に並んでいるヒトビト」や、「中国旅行に行くためのVISA申請で半日間中国大使館前で待っているカタガタ」の持つある種の達観した表情と同じであった。いや、前者に比べると後者の方が最終的には切手が買えたり、大使館の敷地に入ることができる可能性がまだ残されている分(それでも急に窓口が閉まって目的を果たせない人も出てしまうが)、まだ幸せである。Camden Crawl のライブハウスでは、「その気になれば他のバンドを観にいけるのに、ここで待っていること自体が楽しい」、もしくは「列に並ぶと言う、このこと自体がイベント参加の証である」という信念を持っているようにしか見えない連中しかわからない幸せがあるのに違いない、と思った。

今年の Camden Crawl 初日。外気温が10℃を下回る中で寒風が吹きすさび、これはカムデンの街を縦横無尽に歩き回るのは不可能だと判断した。オレはやわな中年なのだ。地下鉄カムデン駅を中心にライブハウスはその北部と南部に集中している。そこでオレはこの日は思い切って北部を切り捨て、中心部からスタートして南部方面へ移動し、しばらく南部のライブハウスで滞留したあと中心部へ戻ってくるコースを考えた。

The Electric Ballroom から、The Black Cap を経て、The Koko を経由してから今回のイベントでは最も南に位置する Purple Turtle に到着した。ここではバンドを3つほどじっくり鑑賞しようということになった。 ここ Purple Turtle は今年も Artrocker マガジン セレクションのバンドがブッキングされており、あまりハズレがないのである。そして正直、あまり混まない。

その日ここ Purple Turtle で最後を締めくくるバンドは、意外なことにすでに人気者となっている Crystal Castles であった。 www.myspace.com/crystalcastles

この会場で今日観ておきたいバンドのステージはもう終了したが、次の Crystal Castles もいままで一度もライブを観た事がないし、せっかくならここに残ろう、と言うことになった。こんなにも寒い中、へたにここを出てお目当てのところにどこにも入れず、路頭をさまよったらイヤだなあ、というキモチも強かったのである。

さて肝心の彼らのステージであるが、想像した以上でも以下でもなく、悪くもないがことさら感動もなかった。そしてそれは、観る前からなんとなくだがわかっていたことでもあった。彼らに対して申し訳ないとすれば、オレはせっかく発見した2階のバーエリアのソファーの空き席を離れるのがもったいなく、けっこう遠目にちょこちょこ彼らの演奏を垣間見ただけなので、そんなに良いとか悪いとか言うのもおこがましいカンジではある。

ともあれ、そんなわけで彼らのステージを数曲観終えた後、帰りの道すがらに点在するいくつかのベニューを冷やかしながら帰途につくこととした。ドアマンに合図をして外に出てみると、一層下がっていた気温の中、この Christal Castles を観たいがために、大勢の若者が列を成して待っていた。そうか、オレが今ここで一人出ることで、列の先頭ひとりが中にはいって待望の人気アーチストを鑑賞することができるのだ。オレはなんとなくだが「一日一善」を行なったような気がして、得意げになって、中に入れる人間、そして列に並んでいる連中に目をやり心の中でつぶやいた。「良かったな、オマエ。だけど、オレのほかに出る人間はあんまりいないと思うよ。」

だが、列を成している連中の表情はオレにこう語っていた。「えっ?自分らはビール立ち飲みしてるだけなんだけど。中だとうるさくて、話できないじゃん。」

オレにはそうとしか見えなかった。そういえば、Purple Turtle の中でも、バンドを観ずに、「後ろで楽しく談笑」組がけっこう多い。いままで散々観てきた「列に並ぶイギリス人」というのは、一見すると列に並んでいるように見えるが、実は単に瞑想したり、別なことをしているだけなのではないか、と思った。まあ、寒い中では皮膚の薄い日本人には無理だけどな。

Cc3
Photo from Flickr @ Purple Turtle Camden Crawl 18/04/2008
(当日このバンドの写真撮らなかったので、Flickr から拾ってきました)
オレが観たのもこの辺の位置からだった。このカメラマンもBar のソファーから離れたくなかった人かもしれない。でもそんなことじゃあ、NMEに売りつけられるような良い写真は撮れないぞ。

2008年5月26日 (月)

We Are The Physics その2

< 2008. 04. 18 @ Dublin Castle, London (Camden Crawl '08) >

< 2008. 05. 17 @ The Water Margin, Brighton (Great Escape '08) >

人生には限りがあるが、その中でできるだけ多くのバンドのステージをこの目で観ておきたい、というのがライブ道に取り組むオレの基本姿勢である。

どんなにがんばったとしても、観てみたいと思うすべてのバンドのライブを目にすることは物理的にも不可能だろう。だから、たとえそれが結果的に「カス」バンドであったとしても、一期一会の機会に感謝しながら、ひとバンドでも多くの「当たり」を探しに出かけていくのである。

ところでその「当たり」のなかでも、「何度でも観てみたい」と思えるようなバンドに出会えるのはめったにない事である。時としてそういった発見があるときは至福の喜びでもある。人生限りがあるとは言うものの、同じバンドを観にいって毎度毎度しっかり楽しませていただくのも、これまた同様にライブ道の目的なのである。

過去で言えば、もう何回観たかもわからないくらいに頻繁に足を運んだ Data Rock や、ちょうど今だと、Pete And The PiratesLet's Wrestle あたりが、この「何度でも」組になる。機会があればとりあえずは観にいってしまう、という連中だが、必ず楽しめるのがありがたい。今年のカムデン・クロールとグレート・エスケープの両方でその姿を観にいった We Are The Physics も、オレにとってはそういったお気に入りバンドのひとつである。

このヒトタチの良さは、その楽曲やステージのアクションにも当然あるのは以前書いたとおりだ。だが、これに加えて彼らのなんとなくだが人の良さそうなカンジが魅力になっていることも確かである。彼らのはなし言葉が、人柄が良さそうに聞こえてしまう「スコットランド弁」であることも、大きな理由には違いない。しかし、この We Are The Physics がどこに行っても自分たちが出演するライブハウスで最初から最後まで(自分たちのステージを除き)、「対バン」の様子を最後列でビールを飲みながら鑑賞している姿を見ると、ボーカルの Michel がステージ上で時々見せる「はにかんだ」姿がやはり人のよさから来るものであることを確信するに違いない。今回、ブライトンでもカムデンでも、オレが彼らのステージを観たのとは別の日・別の場所で演奏前、もしくは演奏後の彼らを姿を見ることがあった。どこでもメンバー4人仲良くたたずみながら他のバンドのライブを、しかも他の一般客のじゃまにならないように、静かに見ている姿はとても好感がもてる。と同時に、なぜだかとても声がかけやすい。

オレの友人は彼らをオフステージで見かけると、からなず「よっ!調子はどーよ?」と声をかけていたが、そのたびに「えっ?あっ、ま、まずまずです・・・。」と照れていた。

このバンド、うまくすれば日本でもかなりヒットするのではないかという確信を持っているのだが、マネジメントのプロモーションが良くないのか、いまひとつブレイクの気配がない。彼らの人の良さが今後の成否にマイナスに働かないように、と祈るのみである。

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@ Dublin Castle (Camden Crawl '08)

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@ The Water Margin (The Great Escape '08, Alternative Escape )

去年から今年にかけてこのバンドに大きな変化があった。以前はスリムパンツをはいていたのはスリムの似合うボーカルの Michael とドラムの Michael だけであったのが、今年はギターの Chris までもが黒スリムだ。つまり今スリムをはいていないのはもう一人のギター Michael だけである。スリムが似合わないはずの、残り2人のうち一角が崩れたと言う以上に、「スリムジーンズ化」も峠を越えて、スリムを着用しないバンドは増えてきた今の時期になっての「スリム化」である。このビミョーなずれも、人の良さを語る上で欠かせない事実だと思い、あえてここで証言させていただく。

このバンドのよさが凝縮されたこの曲のPVを再び。 [Less Than Three]

● We Are The Physics その1

* コメントへの返信ができないので追記です :

以前観た Polysics のステージ (@ London) はちょっと怖い経験でした。いつかレポートしたいと思います。

2008年5月22日 (木)

Thieves Like Us

< 2008. 04. 26 @ Fleche d'Or, Paris >

普段から多くのイギリス人とフランス人に接して悟ったことがある。人間にとって根源的に一番大事な価値は何かと言うと、それはきちんと列に並んで順番を守れるかどうか、ということをおいて他にない、ということをである。

いうまでもなく、列に並ぶことのできる人間がイギリス人であり、それができない、というか並ぼうという意思をまったく持たないのがフランス人だ。従って、幼少のころから「人さまに迷惑をかけてはいけません」と教育されて育ったわれわれに日本人にとっては、すこぶるフラストレーションのたまりやすいのがこのフランスという国なのである。

ここパリは、他人の迷惑を顧みない連中が束になって自分のまわりにいるだけでも住みづらいのに、活動しているインディ系バンドがかなりへなちょこな連中ばかり、というのもオレにとってはかなりのマイナス点だ。だから、仕事の都合で最近ロンドンではなくパリで過ごす時間が増えてしまったのは、正直ちょっとばかり悲しいものがある。もっとも、歴史がありマーケットとインダストリーが発達し、それゆえ各国のミュージシャンを吸い寄せて厚い層を形成しているロンドンの音楽シーンとここパリを比べるのはそもそもフェアではないかもしれないが。

ところが、世の中にはロンドンではなくて、こんなパリを目指す連中というのもいるようだ。

一昔前は、フランスのお家芸「エレクトロ」はオレの守備範囲外だったので、どんな人が活躍しようがそこに吸い込まれていこうがあまり関心はなかった。ところが「KITSUNE」以降顕著になったのだが、英国はおろかアメリカで活動中のバンドまでが、フレンチ・プロデュースを目指すようになってきた。結局はダンスの味付けになるわけだが、オレが普段から追いかけているようなUKインディ・バンドの連中がこぞって「KITSUNE憑(つ)き」になっているので、追いかけないわけにはいかない。確かに「時代の音」というか、魅力的なチューンに仕上がっていることは確かである。

そこで日本でも大ヒットの「KITSUNE」コンピレーションを買ったりするのだが、ふとした疑問がわいた。それなりに定評があったり、すでにオレが知っているバンドはともかく、このアルバムでしか名前を聞いたことのない連中と言うのは、いったいいかなる実力のほどであろうか?このコンピレーション・アルバム全体の印象が悪くはないのはわかった。だがこの「KITSUNE」一曲入魂組のライブステージはそれほど面白いものなのか?

このことを確かめる機会は意外とすぐやってきた。[KITSUNE Maison 4] に [Drugs in My Body] という曲が収録されている Thieves Like Us というバンドが Fleche d'Or で演奏したのだった。www.myspace.com/thieveslikeus  www.thieves-like-us.com

オレはこの [Drugs in My Body]  と言う曲が演奏されるのを待っていた。その曲しか知らない、というのもあるが、ビジュアルも含めたこの曲の演奏の良し悪しで、このバンドがライブバンドとしてどれくらいの価値を持っているかが判断できるからだ。

ところが、一曲目からイキナリつまらなく、2曲・3曲と苦痛になってきたぞ。予想はしていたのだが、うつむき加減にキーボードにむかったり、ただもぞもぞ歌ったりしているだけだ。初めて聴く曲も、普段から「踊り」とは縁のないような日本人中年サラリーマンであるオレだけではなく、フランス人の聴衆までが、踊る以前に突っ立って「凝視」しているありさまである。ライブ、不発であった。

オレは耐えられずに、唯一知っている曲にたどり着く前に3曲目の終わりで撤収した。さすが KITSUNE のCDプロデュース力やよし、と言ったところか。ニューヨークで活動中というこの連中が、彼らの目指したパリで受け入れられていたのかどうか、確認することができないまま家路を急いだのであった。

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@ Fleche d'Or

途中で退場したのにはもうひとつワケがある。出口のクロークにジャッケットを預けたのだが、「列無し」「順番無視」「譲り合い精神皆無」のここのクロークではいつもオレは敗者となる。客がここにごった返すと、オレはいつまでたっても家へ帰れない。今回早めに会場を出たということは、彼らのステージが終わるまで待てなかった、それだけの価値がなかった、ということにもあるだろう。だが、ここが多少は譲りあい精神のあるイギリスだったら、クロークでそんなには苦労しない。そもそも列がある。そしたらオレはこのバンドに最後まで付き合っていた可能性も高いのだった。このバンドがフランスを目指したのは、彼らにとってもオレにとっても不幸であった、と締めくくりたい。

2008年5月21日 (水)

BirdPen

< 2008. 04. 23 @ Fleche d'Or, Paris >

先日いつものように Fleche d'Or に行って BirdPen という英国のバンドを観ていたときのことだ。www.myspace.com/birdpen  www.birdpen.com

このバンドのステージはとりたてて印象に残るものではなかったが、ちょっとだけサイケっぽいカンジがしないでもない。だからかどうかはわからないが、女性用トイレにかなり長い列が出来ていた。

この日はそんなに混んでいなかったので、本来トイレの列が長くなる状況でもなかった。列が長くなる理由はハッキリしていて、トイレの個室に入ったヤツが出てこないからである。なぜ出てこないかと言うと、たいがいは薬物摂取作業におおわらわか、摂取効果によりワケがわからなくなってしまっているからである。それが証拠に、長時間個室にこもっていた連中がドアを開けて出てくるときは、たいていの場合女子二人組である。二人組で排泄行為をしていれば変質者だが、彼らはいたってノーマルなただのジャンキーだ。

それに文句を言わずに並んでいる(ように見える)連中も、とてもココロの広い人か次の摂取予定者に違いない。トイレを我慢して困っているようにも見えないが、オレ自身は実はとても困ったのである。

ここ Fleche d'Or のトイレは男女同じ入り口で、その入り口は常に開放状態にある。女性用は奥に個室があるのだが、男性用はまさにその入り口に便器が三つ90度角で並んでいるだけだ。便器によってはズボンのチャックを開けたら、そのななめ正面30センチくらいのところにパリジェンヌが列を成しているのが目に飛び込んでくるのであった。よしんば後ろ向きで用をたせる便器にあたったとしても、列の全員に(除:演奏中)「じょぼじょぼじょぼ」という豪快な音を聴いていただくことになる。恥ずかしがり屋の日本人オヤジにはいたって不都合な状況となっていた。

不幸にして空いていた男性用便器は女性達と最も接近し、目が合うポジションのものだけだったので、オレは体全体を不自然に曲げ、便器には斜めに対峙した。汚いはなしで恐縮だが、もしかしたらオレは店のトイレ床面を多少汚してしまったかもしれない。だが、用をたしながらその数十センチ前方にいるマドモアゼルとアイコンタクトが取れるほど、オレはまだフランスになじんでいない。下を向きながらそそくさと手を洗って、ステージ前に戻った。

オレは基本的に他人が薬物摂取で気持ちよくなることに対してネガティブな気持ちは持っていないが、トイレにこもるのはいろいろな人の迷惑になるので止めてもらいたい、とそのとき思った。

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BirdPen @ Fleche d'Or

イケメン風であったが、シャツの「BP」マークがややダサい。この日は全般的に出演者のクオリティが低調だった。サイケに限らずそういう時も「薬物トイレ」危険信号かもしれない。

2008年5月20日 (火)

Johnny Foreigner

< 2008. 05. 16 @ The Honeyclub, Brighton (Great Escape '08) >

せっかくなので、観てきたばかりの Great Escacape '08 のはなしを続けたい。

ことしは比較的ぐるぐると歩き回ったので、3日間であわせて25バンドほど観ることができた。いくつもの「発見」、「驚き」そして「納得」があったので、折を見てこのブログでも紹介してみたいと思うのだが、今日は『緊急情報:08年度グレート・エスケープがっかり大賞』の発表だ。

単刀直入にいうと、それは Johnny Foreigner であった。今けっこう話題の新人で、今年の Great Escape' 08 のプログラムブックの表紙にも登場のアート系パンクサウンドの3人組である。 www.myspace.com/johnnyforeigner

何かの音楽雑誌についていた付録のオムニバスCDで聴いた曲がなかなか良かったので、早めにライブをチェックしたいと考えていたのだが、先月おこなわれた Camden Crawl では残念ながら見逃してしまっていた。今回の Great Escape でも初日の登場(木曜日)を見損ねて、後がない二日め金曜日にようやくとっつかまえたのである。正直、個人的に期待感はかなり盛り上がっていたと言っていいだろう。ところが、いざ演奏がはじまってみると音がわやくちゃで、曲の原型をとどめていない。演奏が下手、と言うわけでは必ずしもないのだろうが、音の出し方が雑でCDで聴くほうが断然良い。かといってステージ上の動きが面白いわけでもなく、ライブバンドとして及第点を差し上げられなかった、というのがオレの結論だ。まあ、若いし汗かいて元気だったけどね。

まあ、考えてみれば「期待が大きい」から「観てがっかり」なのである。なんの「期待」もなしに観ると意外と楽しめたりするものだとも思う。周りが盛り上げてもそんなに期待しないで観にいってくれ。ライブはフツーの新人さんだ。Johnny Foerigner

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@ The Honeyclub

かわいい柄のバンドTシャツを販売していた。バンドTシャツハンターのオレではあるが、ちょっとしょんぼりだったので、今回は購入せず。

2008年5月19日 (月)

The Kooks

< 2008. 05. 15 @ Moshimoshi Sushi, Brighton >

昨日ブライトン(Brighton)から帰ってきた。

今年3年目を迎えるバンドのショーケースイベント Great Escape は、昨年そして一昨年にも増して内容の濃いものであった。この週末に行なわれた Great Escape '08 は、個人的にはとても楽しめたし、観ることができてよかったなあとしみじみ思い返すライブアクトが少なくなかった。

前にも書いたが、ここブライトンでこういったイベントを行なうことにはすごく合点がいく。ミュージシャンをはじめアーチスト達が活躍しやすい環境の町なのだろうし、それゆえバンドの数も多くて層が厚い。ライブベニューも豊富にあるので、オーディエンスもどんどん耳が肥えてくる。そうするとさらにミュージシャン志向の若者が集まって、お互いに刺激を与えていく - といったような仕組みだろう。退屈しない町なのだろう、と思う。

一昨年、第一回目の Great Escape '06において、いちばん目玉となる出演者は The Kooks だったと記憶している。まさにここブライトン出身の彼らがデビュー後しばらくしてスターダムに駆け上がっていった時期と重なっており、「ブライトン」でのイベントを印象付けるのにも役立っていたはずだ。

一方で、オレとしては The Kooks の音楽には引っかかるものが何もなかったので、今まで一度もライブを観た事がないし、観ようと思ったこともなかった。むしろ「こりゃたまらんなあ。」と勘弁して欲しい部類のサウンドであったため、フェスティバルなどであえて避けることはあっても自ら飛び込んでいくような対象にはならない人たちであった。むかし Johnny Borrelle (Razorlight) がNME のインタビューで『 Kooks のやっている軟弱な音楽はロックじゃあねえ!』とこき下ろしていたが、記事を読みながら「オマエが言うな」とひとり言で突っ込んだのが、オレが The Kooks に対して一瞬ではあるが同情的な気持ちになった唯一の経験である。

とはいえ彼ら自身は人気街道まっしぐら、である。いまさらオレのような偏屈な日本人中年男性からの応援やら黄色い歓声は期待もしていないだろう。先ごろリリースされた2枚目のアルバムも英国初登場第一位。もはや「スキ」なしのポジションを獲得しているはずの連中である。アメリカ進出なんかも「これから」の視野にいれていたおととしあたりは、たとえゲスト扱いであっても Great Escape といったショーケースで更に名前をワールドワイドで売ることに意義があったかもしれない。だがいまや、いくら「ブライトンを代表するバンド」だからといってももはや彼ら The Kooks が地元バンドを代表してイベントの盛り上げ役を買ってでる必要もないのであろう。去年も今年もイベントのラインナップに彼らの名前は無かった。忙しいに違いない彼らのことだ、地元のブライトンに滞在している時間だってほとんどないはずである。

ところでオレは今回イベント初日の木曜日、昼過ぎあたりにブライトンの町に入った。友人と合流し、その日もらったバンドのタイムテーブル、すなわち時間割を手に持ちながら、「今日は何時にどこで誰を見るか」の作戦会議を開くことにした。場所は以前もここで紹介したことがある「Moshimoshi Sushi (もしもし寿司)」という英国資本の回転寿司屋で、味は悪くない。店内に入って着席するや、われわれはビールをオーダーする前からおもむろにGreat Escape のタイムテーブルを開き始めた。

我々が店に入った午後3時ころは、まさに昼食時(どき)の喧騒も一位段落し、広めの店内はがら~んとしたものであった。我々以外の客は2組だけ、うち一組はわれわれの真横のテーブル席で、小さな子供をたくさんつれた親子連れ。ちょっとうるさい。そして残りのもう一組に目をやると、それは The Kooks のボーカル Luke Pritchard 氏とご一行様であった。仲間と楽しそうに談笑しているルーク氏をみて、オレは直感的に思った。「今の時期ここにいる、ということは、今年やつら(もしくはソロ)はこの Great Escape でシークレット・ライブを行なうに違いない。」

もちろん、だからといってそれを追いかけようというオレではないが、いわゆるセレブ芸人と同じ回転寿司の皿を分け合う体験と言うのも話のタネになるなあ、と言うくらいには楽しんでいたのである。

さて、それはそれとして、皿が5皿、6皿と進むに従って、本日の行動予定をきめるわれわれの議論も白熱し、ようやく収拾を見せ始めたころであった。お会計が近いと思われるルーク氏がトイレに立ったのだが、そこに向かうには店の構造上オレの座るテーブルの真横を通ることになる。そしてまさに彼が我々のテーブル横を通過したそのとき、この人気者シンガーは歩きながら何をしていたかと言うと、大きな声で鼻歌を歌っていたのである。

The Kooks の曲はアルバムを持っていないのでよくわからないが、知っているヒトが聞けばわかるのではないか。あ然とするわたしと友人の横を、トイレからの帰り彼は再び鼻歌を聞かせてくれながら歩き去っていった・・・・・。アレはいったいなんだったのだろうか。いずれにしろこのことがオレにとっておそらく最初で最後のThe Kooks ライブ体験」であることだけは間違いなさそうだ。

実際にことし彼らの「シークレット・ライブ」があったのかどうか、オレにはわからない。そして、もちろん回転寿司屋でいい心持ちになってしまって、単に鼻歌が出てしまったオヤジ現象と言う捕らえ方もできるだろう。だがオレの出した結論はこうだ。

『この5月18日から大掛かりなアメリカ・ツアーがはじまる。その直前、準備で地元に帰っていた。ちょうど Great Escape の時期だ。せっかく世界中からいろいろなバンドやらオーディエンスがここブライトンにやってくると言うのに、気の置けないこの町で自分には歌う場所が今年は無い。ふと目を見やると、さっきからチラチラと自分のほうを見ている日本人がいるようだ。Great Escape を観にきたやつらか。そうだよ、オレだよ。オレはブライトンにいるんだよ。でも今年は演奏の機会が無いんだ・・・・』そんなことを思っているうちに、自然と鼻歌が出てきてしまった・・・・。

ということでもないのかもしれないが、オレはこの鼻歌ですこしだけ彼らに対する好感度があがったのだった。

 

2008年5月14日 (水)

Lets Wrestle その2

< 2008. 04. 18 @ Purple Turtle, Camden Crawl '08 >

さて、今年の Camden Crawl '08 で出色の出来は誰だったかと問われれば、やはりこの Let's Wrestle をあげないわけにはいくまい。

すでに昨年一度観て感銘をうけたバンドではあるが、2008年も3分の一を過ぎ、今年これまでのところ最も注目株の新人と呼ばせていただきたい。Stolen レコードの同僚 Pete and the Pirates のアルバムが今年上半期のマイ・ベスト盤であるとはここに堂々と宣言したいと思うが、コイツラ Let's Wrestle の今年2月に出たミニアルバム [In Loving Momory of ......] も会社への通勤、行きと帰りで毎日2回づつ聴いている特別愛聴盤だ。アメリカっぽい音とも言えるが、味わいはやはり英国節だ。

キャラクターの立ったメンバー3人が繰り広げるライブもかなりおすすめできる。機会あればまた観にいきたい。

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@ Purple Turtle

今週の Great Escape にも登場予定。

Let's Wrestle その1

Let's Wrestle その3

2008年5月13日 (火)

Make Model

< 2008. 04. 26 @ Fleche d'Or, Paris >

ここフランスでテレビのマルチチャンネルというと、いわゆるケーブルテレビや衛星放送が主流というわけではない。メインとなるのはIPテレビ、すなわち電話線から引っぱってくる例のアレだ。

オレが加入している『Free』というプロバイダーは、イギリスから躊躇なく MTV2 やら VH1 Classic といった音楽チャンネルを英国のTVCM込みで見せてくれるので、かなりお気に入りである。MTV系の各種チャンネルがパッケージになって毎月2ユーロ弱、300円くらいの追加料金なのでわるくない。当然ながら基本料金に含まれるチャンネルが大量にあるのだが、ほとんどはフランス語放送なので、それを観ても理解ができないオレには意味がない。

そんななかでひとつだけ時々見るフランス語チャンネルがあって、それは「NOLIFE」というほぼ無名の放送局である(チャンネル123)。オンエアを見る限り、放送内容の半分は「コンピューター・ゲーム関係」、そして残りの半分は、なんと「J-Music」、要するにJ-Pop を流している。偶然見かけたのだが、延々と日本の音楽のプロモーション・ビデオを放送し続けているのである。「日本」に触れられる懐かしさというよりは、いったいなんでこんなことで成り立っている放送局があるのだろうという興味から、ときどきつけっ放しで見ているのだ。当然フランス人のプレゼンターが出てきてフランス語を話しているのだが、PVを見ている限りにおいては「日本語」だけなので問題がない。

イギリス経由でヨーロッパに渡って以来はや10年。この間真剣に「J-Pop」とやらを聴いたことがないので、このTV局がノンストップで流し続ける「日本人アーチスト」たちに見知った顔はひとつもない。どいつもこいつも自分にとっては全く初お目見えとなっている。

ところで、こうしてそんなに頻繁ではないまでも、合計するとかなりの日本人ミュージシャンの音そして映像に触れる機会に恵まれているわけなのだが、自分にとって面白いと思えるアーチストに当たったことが一度もない。ここであえてミュージシャンの名前を羅列しないが(実際覚えていない)、内容としてはパンクあり、ギターバンドあり、ラップあり、レゲエありで、相当広いジャンルをカバーしてはいる。さすがのオレも日本のバンドの名前を全く知らないわけではないが、ここに出てくる連中とは一瞬たりともかすっていない。たぶん最近出てきた新人で、今まさに伸びてきている連中なのだろう、と思う。

オレはいつのまにか日本の音楽を受け入れない体になってしまったのだろうか、と一瞬考えたがたぶんそうではない。結局ここでセレクトされている連中というのは、なんだかんだいってもいわゆる「メジャー」レーベルから売り出しているバンドだったりするのだと思った。自分の知らない連中が大量にオンエアされているので、一瞬インディ系のマイナーなバンドたちであるような錯覚に落ちただけであって、たぶん日本に住んでいるヒトから見れば、まぎれもなく今ヒットチャートを上昇中の、みんなが知っている「メジャー」系アーチスト達にちがいないのである。つまり自分が日本に居たとしても、あえて曲をきいたりライブを観にいったりしようと思う連中ではないわけだ。

なんのオチもない話だが、オレは本質的にこの「メジャー」レーベル感のある音が好きではない。いや、先入観をもって嫌っている節があるといってもいい。基本的に「キライ」だから「先入観」を持つのだが、一度先入観を持ってしまうと物事をネガティブに見てしまいがちである。

本来イギリスの音楽を聴いていても、「メジャー」系の音を『歌謡曲』と呼んでさげすむ傾向はあるわけだが、レーベルが「メジャー」かどうかだけをみて予断を持つのは本来正しい姿勢とはいえないはずだ。だが残念ながら新人デビューがイキナリ「メジャー」系レーベルと言う場合、オレはかなりの確率で斜に構えて見がちなのは事実である。本来そういった先入観に惑わされずに「ライブ一発」で判断していこう!というのがこの「ライブ道」の求道方針なのだが、この「イキナリ・メジャー・デビュー」新人の場合、そもそもライブに行くのを止めてしまう、という事態が発生してしまい、そうなると永遠に評価の対象から外れてしまうのであった。

先月の Camden Crawl '08 でパスしてしまったMake Model も、本当はちょっとばかり気にはなっていた連中だった。しかし、「メジャーでデビュー」という情報に触れてしまった瞬間に「カムデンで観たいバンド」から落選してしまったヒトたちである。www.myspace.com/makemodel  www.makemodel.com ところが捨てる神あれば拾う神あり。 Camden Crawl の翌週末、パリの Fleche d'Or で演奏するという情報をつかみ、足を運んでみた。この日パリの別のライブハウスで Ipso Facto というこれまたちょっぴりだけ話題のバンドを観にいく予定だったのだが、直前に全然好きなタイプの音ではないことに気がついて気が変わったのである。

Make Model のステージは、結果としてはまずまず悪くないものだった。

「モノスゴい発見!」と言うわけにはいかなかったが、新人バンドらしい純朴な感じもあって十分合格点をつけられる内容だったと思う。ライブに比べると、 MySpace で聴ける音源がむしろきれいにまとまりすぎており、逆にマイナスと言えなくもない。これは「メジャーレーベル」の音か?と言われれば、たしかにそうだが、ライブが悪くなかったので、全体的にネガティブな印象はあまり持っていない。

「先入観」自体もライブ道の楽しみのひとつになるので、「メジャーでデビュー」に対しては胡散臭さを感じるように振舞いつづけたい、とは思う。ただまあ、観ることができるバンドはごちゃごちゃ言わずに観れるうちに観ておいた方がいいよな、と感じた夜だった。

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@ Fleche d'Or

ボーカルの Aimi は、ステージの上で足がぷるぷると震えていた。新人さんなので緊張しているのかと思ったら、どうやらちがった。靴をはかず、ず~っと「つま先立ち」しながらうたっているのである。そりゃ、ぷるぷるもするよな、と思ったが、なぜそうしているのかは不明。上背は高くないが、身長を「伸ばす」には靴の方が便利だ。

今の若い人たちは知らない『死語』だと思うが、久しぶりに「ブリッコ」というコトバを思い出させてくれる振る舞いのヒトでもあった。だが、そんなに悪い印象は残ってない。

2008年5月 5日 (月)

Trompe Le Monde

< 2008. 04. 23 @ Fleche d'Or, Paris >

さて、カムデン・クロール '08 の興奮もまだ冷めやまぬ時期ではあるが、来週はもう Great Escape '08 だ。今日は半日かけて出演バンドをチェックしていたのだが、3日間通して観てみたいバンドだらけ。いったいどこの会場に行くべきか、当日になっても悩みは尽きないものと思われる。今年も会場が増えて全部で32ヶ所。気合を入れて走り回らなければ、観ることができるバンドは、単純に計算しても全体の 3% にしか過ぎない可能性がある。

このイベントは、「欧州最大のバンドショーケース」と銘打っているだけあって、ヨーロッパのいろいろな国から多数のバンドがエントリーしている。毎年、そして今年も我ら日本からいくつかのバンドがエントリーしているが、はっきり言ってあんまり「かまって」あげられる暇がない。イギリスのバンドが質・量ともに圧倒的に優れていることは言わずもがなであるが、意外なヨーロッパの国々から普段目にすることのあまりない連中が大挙して押し寄せるのだ。中にはデンマーク領フェロー諸島という、普通の暮らしをしている(含むオレ)日本人には一生涯縁もゆかりもない地域から駆けつけるバンドもあるようだ。人口とクオリティは比例しない。アイスランドがそれを証明してくれているではないか。

オレが最近ご厄介になっているフランスからもいろいろな連中がブライトンに駆けつける。目玉はやはり The Envelopes (純フランスとも言いがたいが)だろう。そのほかにも Sammy Decoster、The Shoes (サマソニ決定)、Syd Matters、Soko (Camden Crawl にも登場)、などなどといった連中その他が参加するのだが、こういったヒトタチは基本的に英語で歌っている。そう考えれば The Teenagers も今回参加するようだが、コイツラだってそうだ。

北欧やオランダなどの小国は別として、いわゆる欧州主要国のなかで母国語ではない英語に一番堪能なのがフランス人(特に若者)というのは意外と知られていない事実である。フランスに演奏しにやってくる新人ミュージシャン(英国人)のなかには、最初はおそるおそるステージから英語で話しかけるものの、観客が皆フツーに反応できるのを知って安堵の表情を見せる連中も多い。

ヨーロッパに限らないが、フランスにいても「インターナショナル」な会社の共通言語は当然英語だ。そういえばカンヌの映画祭だってみんな英語を話している。英国を中心地とするヨーロッパ音楽業界の基本言語も特別なことがない限りはみんな英語である。ミュージシャンがどこの出身であれ英語で歌を歌い、それがヨーロッパ中に売れていく。うまくすればアメリカや、他の国でもマーケットを開拓できるかもしれない。そんな音楽産業のシステムをそのまま体感できるのがまさに Great Escape である。

そうするとどうなるか。

英国以外のヒトが自分の国で音楽をやるときにも、それは「英語」になるのである。自分の国で1000人のファンを持つより、一カ国100人のファンをヨーロッパの20カ国で獲得した方が、支持者が二倍になるわけだし、レコード会社からの声もかかりやすいはずだ。そういう野心がある人たちは最初から「英語」で」歌を歌うことになるわけである。

先日見た Tromp Le Monde というアルプスのふもとグルノーブル出身のバンド。www.myspace.com/americanwayoflie  www.myspace.com/thisispop www.thisispopband.com オレの好きなジミー・サマービルの [Small Town Boy] をカバーしていたが、その曲の通りまさに「田舎のとんがった連中」だ。はっきり言って、曲もステージアクションもダサい。アートスクールに通っているのだろうか、凝った BGV 以外に評価できるものはなかった。今後こいつらをもう一回観ることもないだろう。

しかし、彼らは全編英語でステージを勤めていた。パリの観客もそれに対する違和感は持っていない。このバンドの野望はほかのフランスのバンド同様「ビッグ」なヨーロッパ制覇に違いないとおもわれる。こいつら自身はは凡百だが、あまたいる彼らのようなバンドがヨーロッパ全体では「厚い」層を支えているのだということに気がついた。

Blood Red Shoes (フランス人・スペイン人)や Screaming Tea Party (イタリア人・日本人)ように英国に渡ってしまって、イギリス人の観客に評価をゆだねる、というチャレンジがある一方で、フランス人はフランス人で英語で歌う自国バンドの良し悪しを日々冷静に評価しているのに違いない。

日本語で歌を歌い、そしてそこに大きなマーケットが存在している。あるいは、「海外」で売れる必要がない、というわれわれ「日本」の状況とは違うという全く当たり前のことに、彼らのような「底辺」の裾野にいるバンドの英語を聞くことで気がついた。どちらがいい、という話ではないが、あらためて「ハッ」としたのであった。

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@ Fleche d'Or

パリのオーディエンスが田舎出身のバンドを見る目は厳しくもやさしい。

コメントいただいたのですが、返信ができないので追記です。 : そのバンド、発見できませんでした・・・。

2008年5月 4日 (日)

Does It Offend You, Yeah?

< 2008. 04. 18 @ Koko, Camden Crawl '08 >

さて今日は小ネタですが、今年の Camden Crawl ’08 のがっかり大賞を発表させていただきたいと考えております。

去年の Camden Crawl '07 で経験した「歴史的」がっかりとすら言える Cajun Dance Party に比べると小粒ではありますが、先月カムデンで観た10いくつのバンドの中で最もハズレは Does It Offend You, Yeah? だった。www.myspace.com/doesitoffendyou  www.doesitoffendyou.com 残念ながら。

これは、観たバンドの中で最もパフォーマンスが悪かった、と言う意味では必ずしもなく、一番「期待」と実際のライブの格差が激しかったもの、と言う意味で捉えてもらえるとありがたい。彼らのライブを一言でなんと言えばよいのか。オレの結論は「歌謡曲の公開録音ステージ」である。外見が悪そう(不良系)なので、もうすこし「緊張感」があるかと思っていた。

まあ、オレごときにイチャモンつけられてもびくともしない連中であるとは思うが、皆さんも「ボーイ・ミーツ・ガール」のDiscoに遊びに行くのではなく、「音楽」を聴きに行こうと思って彼らを観にいくと痛い目にあう可能性がなきにしもあらず、なので気をつけてもらいたい。

まあ、Koko という大型の「おしゃれ」クラブで演奏してしまったのが大きくマイナス要因に働いてしまったことはたしかである。この Camden Crawl というイベントにおいては、すでに彼らは「ビッグネーム」扱いなのでこの場所での演奏は適当かもしれないが、当然観客は「カムデン・クロール」参加者中もっとも「ぬるめ」の設定だ。友達とおしゃべりに来ただけにしか見えないような観客のダンスBGMとしておあつらえ向きかも知れない。

もっと小さな、小汚いベニューであればオレの点数がもっと甘くなっていた可能性は高いが、アルバムレビューは10点中2~3点という雑誌や新聞が多かったことを思い出した。普通よっぽど「悪意」がないとつけないような低い点数が多かったのは、記者・評論家連中も「期待に比べてがっかり」だったのに違いないと思った。そしてオレが本日「ライブ」点でもダメだしをさせていただいたので、以上これにて終了。

Dioyy

彼らの MySpace ページより。

地下鉄 Mornington Cressent (モーニントン・クレセント)駅前に位置する Koko は、昔は Camden Palace と呼ばれる薄汚いライブハウスであったが、数年前、きれいになって見事に蘇った。マドンナがむか~しにロンドン初公演を行なった場所であり(Camden Palace)、彼女が近年ロンドンに住むようになってから特別公演 (Koko)をおこなったところでもある。

ここは何度通っても自分の好きな「マイポジション」の決まらない今ひとつな場所である。

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