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2008年7月29日 (火)

Arctic Monkeys

< 2005. 08. 26 @ Carling Stage, Reading Festival '05 >

夏といえばロック・フェスティバルであり、またビールの季節でもある。

フェスティバルの醍醐味というのは、まさにビールを飲みながらバンドのステージを楽しむこと尽きるのであって、したがってバンドの演奏がつまらなくなってきたり、あるいはビールがおいしくなくなってきた時点で、オレはそろそろその日の撤収を考え始めることになる。マイ・リュックに必ず日本直輸入の「するめ」を忍ばせているのは、ビールのおいしい瞬間を持続させるための生活の知恵でもある。

そんなわけで、大手のビール会社がフェスティバルのスポンサードを行なうのは合点のいく話だ。一番の例は、なんといっても英国最大のビールブランド Carling (カーリング)の名前を冠した レディング Reading (+ Leeds) フェスティバルであろう。普段パブではあえてオーダーするブランドではないのだが、このフェスティバル会場内ではノー・チョイスだ。ただし街で飲むカーリングよりもなぜだかおいしく感じる瞬間があるのは、フェスティバル会場ならではだと思っている。

10年間の契約が終了して、今年2008年からこのカーリングがスポンサーを降りたらしい。皆がレディング・フェスティバルと呼んでいるこの由緒あるイベントは、昨年までの10年間、正式には「カーリング・ウィークエンド」という名称だった。実際カーリングからの広告出稿が多そうな音楽雑誌などは、比較的あえてこの「カーリング・ウィークエンド」という名称を記事の中でも多用していたような気がする。おそらく会場内のビールサプライヤーとしてのポジションは継続するのではないかと想像するが、レディング・フェスのカーリング時代はここに幕を閉じたのである。

識者によれば、イベントの正式名称が「レディング・フェスティバル」に戻る、ということは大歓迎らしい。商業主義的なニオイがきえるからウェルカムなのだと思うし、実際近年のレディングフェスティバルの成功の自信の表れだとも思う。今年チケット完売に失敗したグラストンベリーとは対照的に、レディングの方はチケット発売後、『歴史的』短時間のうちに完売したそうである。

だがちょっと、とオレは思った。カーリングの名前が消えるということは、「Carling ステージ」の名前も消えることである。

近年のレディング・フェスにいかれた方はよくご存知と思うが、毎年多少の編成違いがあるものの、ここのステージの基本は、屋外の「メインステージ」のほか、最近上り調子のバンドが出てくる大規模テントの「BBC ONEステージ」と、新人バンドが中心の小規模テントであるこの「 Carling ステージ」で成り立っている。もちろんこのほかにも「ダンス・テント」や「コメディ・テント」、あるいは、Kerrang 誌っぽいいわゆる『ロック系』バンドだけを集めた「ロック・アップ」ステージその他もあるが、それらはサブの扱いだ。

個人的にはこの「 Carling ステージ」での印象深い想い出がいろいろあるのだが、それはスポンサーでもありイベントタイトルを持っていたカーリングがこのステージのラインナップに込めた思い入れの深さの表れ、という言い方ができるかもしれない。このテントを満杯にしたバンドがその後トップバンドに登りつめていく。「あの伝説のカーリング・ステージでのライブ」という表現はいままでに何度も目にしてきた気がするのである。

'06 年の Klaxsons も大混雑だったが、'05 年の Arctic Monkeys のときも小さいテントにヒトはあふれかえっていた。当時彼らは[ Fake Tales of San Francisco ] という曲をリリースしたばかりの新人バンドで、出世作 [ I bet You Look Good on the Dancefloor ] がリリースされたはその数ヵ月後のことである。この時点でオレは、「見逃してはならないバンド」とNMEに紹介されたいたことだけを頼りにこのステージまでやって来たのだが、世間はこの新人バンドに熱狂していることを知っておどろいたのであった。

ところで、この日は折から気温も上がり、Arctic Monkeys の登場する昼下がりは、まさに「ビール」日和と呼べる暖かさ。観客は皆手にビールを持って歓声を送り、その状態のままどんどんぎゅうぎゅうづめとなっていった。予想はしていたが、オレの近くの薬物過剰摂取者が、音楽に合わせて踊るうちに手に高く掲げたビールをまわりにぶんまき始めた。オレをはじめ被害者が続出するなか、大量のしぶきを浴びた被害者Aが、加害者の頭からビールをかけた。しかし当然ながら加害者は、気持ちよくなりすぎて何が起こっているのかわからず笑っている。そのうちに、周りの被害者連盟が面白がって「元」加害者によってたかってビールをかけ始めたのである。

宙を舞い、自分にも浴びせかけられるビールのしぶきを見ながらさすがにオレは耐えられなくなり、演奏半ばにしてテントの外に撤収せざるを得なかった。もともと混みすぎていて、ステージの上は何がなにやらほとんど見えなかったのだが、今となってはわずかな時間でもこの「歴史的」な現場に立ち会っていた、ということが、ビールのしぶきと合わせて想い出になっている。結局これが今までのところ最初で最後の Arctic Monkeys 体験になっているのだが、オレにとって彼らは永遠に「 Carling ステージ」の Arctic Monkeys なのである。(カーリング・ビールも浴びたし)

その Carling ステージは、今年から「Festival Republic Stage 」と名称が変更になるらしい。なんとなく意味がありそうで、つかみどころのない中途半端な名前である。たしかにラインナップを見ると、個人的にはステージを観てみたいと思わせるような、主として新人バンドの名前が連なっているのは今までと変わりがない。だが、レディング・フェスでは今年から、グラストンベリー・フェスでも人気を博し始めた「BBC Introducing ステージ」という新たなステージが加わるようだ。こちらの方はアン・サインド、すなわちまだレーベルと契約を交わしていないような新人連中が中心になるそうであるが、だとすれば、以前のように「アン・サインドの大物インディバンド」といわれた !Forward Russia! のような連中が Carling ステージで「サインド」バンドに決してひけを取らないパフォーマンスを繰り広げるなどという、意外性のあるブッキングはなくなってしまうのかもしれない。

いずれにしても、後年、「オレさあ、あのときの伝説の『フェスティバル・リパブリック・ステージ』にいたんだよ・・・」というのは、語呂もわるく、なにか意味も違ってしまうような気がするのである。

ともにビールのうまいステージであってほしい。

Carling_stage

Carling Stage : Flickr より拝借しました。

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