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2008年8月 5日 (火)

Figure 5

< 2008. 04. 19 @ The Monarch, London (Camden Crawl '08) >

ロンドンの街を歩いていると、突然行き倒れのじいさんに出くわすことが多くて驚く。

それも「行き倒れ」てからしばらくの時間が経過し、周りには人だかりができて救急車がじいさんの介抱をしている、というのでは全然なく、つい直前に倒れたばっかりで、人通りが多いながらもオレがほぼ第一発見者、という手合いが少なくないのである。

当然オレはひるんであとずさりし、どうしたものかとパニック状態に陥っていると、近くの若者達が気づきだして手を差し伸べたり救急車を呼んだりする。同時に自分も我に帰ってホッとするのであった。これは決してオレがいざというときに役に立たないダメなヤツ、というだけではなく、イギリスの通行人は、行き倒れのじいさんに慣れているのだと思う。いやそう思いたい。

なぜ日本では行き倒れのじいさんが少ないか。これはやばそうな老人は万が一のことがあっては取り返しがつかないので、心配して外に出さない、という家族の気遣いがあるのはもちろんだろう。だがその一方で、外で倒れて人さまに迷惑をかけては気が引ける、という家族の心配もあるに違いない。かくしてヨレヨレの爺さんは、日本ではなかなか外出の機会が与えられなくなっていき、世間から隔絶されていく。一方で、ここイギリスでは人様に気を使うよりは、じいさんのフリーダムだ。万一倒れたって、周りのみんながなんとかしてくれる。当たり前だ。

こういったヤバそうなじいさんたちだけでなく、そういえばわが本邦ではいわゆる「身体障害者」の方々も世間から隔離されてしまう確率が高い。そんな気がする。いまは昔ほど極端ではないのかもしれないが、それでも「障害者」外出散歩率が英国の方が日本に比べて圧倒的に高い印象があるのは単なる気のせいだろうか。ロンドンのライブハウスにはよく「小人症」の方が観客として来ているし(「小人症」の方を障害者といってよいかどうかわかりませんが)、車椅子の観客は圧倒的に多いだろう。障害のある方も、フツーにそして積極的に「ライブ道」に参加している、そんな印象がここロンドンではあるのであった。

さて、そんな偽善者っぽい発言をしているオレではあるが、実はまんま偽善者であることがハッキリするという出来事が起こった。

今年の Camden Crawl '08 の2日目、オレは MySpace であらかじめチェックをしておいた Figure 5 というバンドを観るため、早めに会場についた。www.myspace.com/figure5  www.figure5.co.uk 今となってはすこし懐かしいような典型的なマンチェスター系サウンドのバンドである。

バンドの登場を待っていると、観客の中に両腕の肘(ひじ)から先がない男性の姿が目に入ってきた。黒い半そでシャツを着ているからその様子がハッキリわかる。たぶん後天的なものではないかとは思うのだが、いわゆる「障害者」の方だ。でも彼もこのバンドが好きで観にきたに違いない。決して混んでるとは言いがたかったが、彼はこんな体でも自分の応援したいバンドのライブを観るために、ここまでやって来たのに違いないのであった。そう思うと、少しだけだがなにやらこころ暖めるものを感じた。

ところで、いよいよバンドの準備が整い、こちらもビール片手にステージ前まで駆けつけた。そして、なんとそこで見たものは、先ほどの肘から先の手のない方が、このバンドのドラムキット前に座っている姿であった。「えええっ!!!」

よく見ると、件の彼は自分の肘まわりに専用の革ベルトを巻きつけ、そのベルトの先からは驚くべきことにドラムスティックが装着されているのであった。両腕とも。そして演奏が始まるや、まったく健常者と変わらないスティックさばきで、力強いドラミングを始めたのである。ハッキリ言って、オレの目はもうそこに釘付けであった。すなわち、そのバンドがどうかということよりも、今やオレの興味はたぶんそこにいた他の観客達と同様に、そのドラマーがいかなる演奏しているかを見ることにそそられていたのである。

実際、バンドの力量自体は MySpace で聴いた期待を超えるものではなかった。正直に言ってしまえば、ちょっとハズレである。だが、「見物(みもの)」としては、一生忘れることのないバンドであったことは間違いない。オレはなんとなくだがドラムばっかりじろじろ見てはいけないのではないか、という気持ちにかられつつ、思い出したようにボーカルの姿を見ては気もそぞろになりつつ、視線をまたドラムに戻すのであった。

写真を何枚も撮った。でもドラムの腕を中心とした写真はなぜだか結局撮ることができなかった。自分は偽善者だな、と思った。じいさんが行き倒れては、自分が恥ずかしい、と考えている家族と同じだ、となんとなくだが思った。ちょっと違うかもしれないが。

Fleche_dor_20080329_038

@ The Monarch

ドラムは左端。首から上のみ。

このドラマーのことがどうしても気になる方は、こちらに。カッコよかったよ。

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