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2008年8月

2008年8月28日 (木)

White Lies

< 2008. 08. 23 @ Reading Festival '08, Festival Republic Stage >

ことし ('08) のレディング・フェスティバルで、観客の中における「オヤジ」占有率が最も高かったバンドは、この White Lies であろう。www.myspace.com/whitelies 

メタリカやその他「オヤジ」客の絶対数が多いバンドはもちろん他にもあっただろうが、小さなステージにオヤジ達がうきうきと集まっていたため、割合としてのオヤジ度数がとても高く異彩を放っていた。もちろんオレ自身も「おっさん」濃度をかなり高めるために貢献をしていたわけだが、観客の顔をじっくり見るまでもなく、オレの視界に入る男性客の7割がたは何らかの形で頭髪がすくなかった。もちろん自分としても今回のレディングで楽しみにしていたバンドのひとつである。

バンドのメンバー自身は端正な顔立ちをした青年達だが、演っている音楽は、「すこし時代がかった正統派 80's ロック」と形容できるだろう。楽曲、演奏そして唄と、どれをとってもなかなかスキのない連中である。UKの若手のバンドの中で唯一、現代における正統派 UK ロックバンドのポジションを取りつつあるヒトタチ、と言っても言いすぎではないかもしれない。ステージは最初から最後まで、充実した内容であった。

ところで実は今回、いろいろな意味で彼らの出演を楽しみにしていた。

この White Lies というバンドは前身が Fear Of Flying という連中で、昨年11月のエントリーでも取り上げたのだが、活躍がこれから、というときにイキナリ解散してしまったのである。いわゆる「計画倒産」で、解散と同時にこの White Lies を同じメンバーではじめたわけだから、たぶんもとのバンドのコンセプトに行き詰まりを感じていたのに違いない。

いちどだけステージを観た Fear of Flying の楽曲は、その半分くらいが「伝統的ハードロック+インディ・ディスコ」というかなり珍しい組み合わせで成り立っているものだったと記憶している。個人的にはけっこう気に入っていた。「面白いところをついてきたな」というカンジで、そのアイディア自体も評価できるものだった。

「解散」の知らせは残念だったが、たぶんこれじゃああんまり売れねえな、という先行きが見えてしまったのかもしれない。彼らは曲作りのセンスも知恵も持ち合わせているように思う。そして何よりコンセプト先行で音楽をやってる感じがする。だから、2008年の現在、どういうポジションに自分たちを持っていけば居場所が見つかるか、かなり緻密に計算しながら物事を進めているような気がするのである。

まあ、感情のおもむくままに「自分のやりたい音楽をやる!」という無鉄砲な姿勢は感じられないが、けっこう人気も出てきたし、うまくいきはじめてよかったな、と思う。少なくとも「オヤジ」のハートはわしづかみだったことは確認できた。本当のジジイロックはイヤだけど、 Hadouken! も勘弁してくれ、という若者にも十分アピールできると思う。もちろんそんなことは、彼らはとっくに計算済みだと思うのだが。

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@ Festival Republic Stage

ことし彼らはフジロックにも出演したそうですが、観客のなかのオヤジ率(ハゲ率)はいかがなモンだったでしょうか?

White Lies その2

White Lies その3

2008年8月19日 (火)

S.C.U.M.

< 2008. 05. 17 @ The Water Margin, Brighton, The Great Escape '08 >

イケメンバンド、というと今だに Maths Class の名前を挙げてしまうようでは、オレはもう時代の流れを追いかけ切れていないのかもしれない。まあ、仮にキッチリ追いかけ切れていたとしても、いい「おっさん」としてどうなのか、という気もするのではあるが。

2007 年に発見した「ビジュアル系」が Maths Class だとすれば、ことし 2008 年は S.C.U.M がキテるのらしい。www.myspace.com/scum1968  こういう時代の潮流を理解するには現場に行って肌感覚でつかみとるに限る。ことしのグレートエスケープ ('08)で、Artrocker 誌イベントを午後の早い時間から観ていたら、偶然に出会った連中である。

俗に沈没しそうな船からは出港前にねずみが大量に逃げ出す、というが、このバンドが始まる直前、どこからともなくやって来た日本人婦女子観客たちが四方からずぞぞぞぞぞっとステージ前に結集し始めた。「こっ、これは何かあるぞっ!」と思ったが、果たして登場したバンドのメンバーは、黒装束に身をつつんだかわいらしい青年達であった。彼女達は「イケメン」発見にかけてはかなり「さとい」ことをオレはなんとなくだが知っている。

見た目どおりちょっとゴスの入ったサウンドは、Maths Class ほどのインパクトは無かった。それと、演奏開始直前にオレの後ろから前方に抜けていった複数の邦人女性がオレに対して浴びせかけた日本語「通さねえのかよ~。」に萎えていたこともあって2曲ほどで撤収。その晩のステージに備えて夕食をとるため会場をあとにした。まあ、オレ個人としてもある種の時代の証人にはなった、とおもう。

オレの横で見ていた友人の証言によれば、オレを日本人と気づかず後ろから日本語で感情をあらわにしたその女性達は、けっこう妙齢を超えていたとの事である。もしかすると「イケメン道」の求道者だったのかもしれない。志は多少違っても、同じく道を極めようと年季を重ねる者として、礼を失せず徳を高めたいものだと自分にも言い聞かせた夕暮れであった。

Scum

Ipso Facto と一緒に、今月号の Artrocker 誌の表紙にも取り上げられた。

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@ The Water Margin

ま、こんなかんんじです。

* コメントバックができないので、追記します:

とても貴重な情報、ありがとうございます。この日はまさに彼ら S.C.U.M のあとが Maths Class だったように記憶しているので(こちらは観ていませんが)、まったく合点のいく話です。想像のとおり、「イケメン道」をつきつめている方々だったのですね。修行が楽しそうでうらやましい限りです。今度ふたたび姿をお見かけすることがあれば、苦行(見た目のさえないバンド鑑賞)はまったく行なわないのか、ちょっと興味があるので聞いてみたいものです。

2008年8月18日 (月)

XX Teens その2

< 2008. 06. 28 @ Glastonbury Festival '08, Dance East >

実はちょっとしたショックからいまだに立ち直れていないのであるが、それは久しぶりに観た XX Teens www.myspace.com/xxteens  のせいである。

いまをさかのぼること約一年前にこのブログを開設したのだが、まさにその初日オレは2つのバンドを取り上げた。 The Chapman Family と、この XX Teens だ。そう、ありがちなパターンではあるが、この2つのバンドのライブを観て受けた感動を何かに書き残したくて、オレは不惑の年齢をはるかに超えながらもブロガーへの記念すべき第一歩をしるしたのである。

はっきり言ってこのふたバンドのことだけ書き終えたら満足してしまった。それから数日間何もせず放置していたわけであるが、何かの拍子にオレのブログに寄ってくれて、読んでくれたヒトがいたようだ。爾来、なんとなく続けたほうが自分の精神衛生上も良さそうな気がして今日に至っている。むりやりなネタが多いブログだ、と核心を見抜いている方もいると思うが、初日のその2バンドについては率直に「すごかったよ」といまでも言える。

まさに1年ぶりに観た彼ら XX Teens のステージは、「名脇役」のメンバー数人が抜けていただけにとどまらず、なんとも形容のしがたい「女性アート・ダンサーズ」が狙ったかのような不思議な踊りをバックで繰り広げており、かなりがっかりするものであったといわざるを得ない。特にダンサーたちは、ちょこまかとこざかしい動きをするので、バンドの演奏に集中できない。彼らの持ち味であるライブの「緊張感」を、明らかに散漫なものに変えていたのであった。

正直、ショックを受けた。いままでの「ライブ道人生」の中でも、3本の指に入る、カッコいいライブパフォーマンスを見せてくれるバンドだったのだが、残念だ。最近出たフルアルバムも、過去のシングルを全曲録音しなおしたようだが、うまくいったとは必ずしも言えない出来だ。たしかに去年('07)の春先、各プレスから絶賛されてシーンに登場以降、今日にいたって伸び悩んでいる感があったのは否めない。いろいろ悩みはあるのだろうが、バックダンサーを見る限りは変な方向に舵を切ってしまった印象が強い。

Art Rocker / Art Punk はあくまで「音」で聴衆を圧倒して欲しい。アート・ビジュアルを出して「説明」してしまってはいけないのである。今月かれらはロンドンのTate (テイト)美術館でライブをおこなうらしい。だが、そこであのダンサーズを出してしまっては、いささかやりすぎであろう。

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@ Dance East Tent

ダンサーズを避けて、写真を撮った。フロントのツー・トップは健在だったが、なんとしてもベースとドラムの2名を失った痛手は大きい。

XX Teens その1

2008年8月14日 (木)

The Specials (fea. Neville Staples)

< 2006. 04. 01 @ Carling Academy Islington, London >

The Specials 自体は同時代に聴いていたのだが(市松模様Tシャツとかも、買いましたよ)、姿を見たことは一度もなかった。でも、当時はとにかくカッコ良い音だった。

Terry Hall という人はかなり才能ある人のようで、どれも長続きはしないがなかなか味のあるプロジェクトが多かった。1985年ごろの The Colorfield は良いメロディの曲が多かったし、「ブリティッシュ・ポップの職人」という怪しげな枕詞のついていた Lightning Seeds のアルバムの中でも、Terry Hall が書いたと思われる曲以外は、「カス」感が漂っていたことをおもいだす。最近でも Dub Pistols のボーカルに参加して、フェスティバルなどでも積極的に活躍しているという印象があった。

彼自身が The Specials 自体をもう一度やる気はあまりなかったようだが、昨年 ('07) のグラストンベリー・フェスティバルでは Lilly Allen のステージに飛び入りして [Gangstars] を唄ったり、それよりもっと小さなステージでは Damon Albarn が弾くピアノに合わせて [A Message To You, Rudy] を唄ったりしたらしい。(もちろんそれらのライブを自分は観ていないのだが、夜グラストンベリーの会場からホテルに戻ってBBC にチャンネルをあわせたら、当日のダイジェストとしてLilly Allen with Terry Hall をまさに放映していた。ちょっとだけ「観たかったな」と思った。)

どうやらコレが彼のウォーム・アップだったようで、どうも今年の秋からオリジナルメンバーをかき集めて The Specials を再結成し、ツアーを行なうようである。いろいろある「再結成」バナシのなかでも気になる物件なので、タイミングが合えば足を運んでみたいものだと思っている。

ところで、The Specials 解散後それぞれのメンバーも各自音楽キャリアを積んでおり、Terry と Fun Boy Three を一緒に組んだ黒いお兄さん Neville Staple も、更にそのあとは「なんちゃって Specials 」的な音楽活動をしばらく続けていた。すっかりオヤジになった一昨年('06)、ついにThe Specials 名でツアーを開始したので観にいくことにした。もっとも、キーマンは彼だけという、一人スペシャルズ、ではあったが。

この日のライブは今でも強烈な印象と共に、記憶に残っている。

演奏自体はどうということもなかった。おなじみの曲が多いとはいえ、やはり主旋律はTerry Hall 氏のカン高い声でないとピンとこない。オリジナルのボーカリストではあるものの、Neville の歌声は、やはり「他人」が歌っている感はまぬがれない。おどろいたのは、この会場に入りきらないほどあふれかえった観客である。さすが腐っても鯛、黒いおじさんだけでも The Specials 、である。その数もさることながら、「質」は言語に尽くしがたい、「ワル」オヤジの集団となっていた。チョイワル、とかそういうレベルではない。「本」ワルのかたまりである。20数年の月日を経て当時の Gangstars が総結集したかのような壮観であった。普段、不良の小僧集団を目にすることはあっても、このような体験は始めてであった。

数年前、 999 というオリジナル・ロンドンパンクバンドの成れの果てをロンドンのどこかのさびれたパブに見に行ったが、そこも「ワル」オヤジ(+一部「ワル」オバ)によって客層が構成されていた。だがそのときの観客数はせいぜい100人。だれもがフロアを自由に移動できた。しかしこの日はレベルが違った。まさに「蟻の通るすきまもない」ほどの「ワル」が何百人いるのかもわからない。オレがこの日連れて行った会社の後輩(日本人青年男性:ロンドンライブ初体験)は、会場に入るや固まったまま微動だにしない。おそらく瞬間的に石になったか、急性トラウマになったかのどちらかだろう。「ワル」オヤジ達の暴力沙汰に巻き込まれ万一のことがあっては、日本にいる親御さんにも申し訳ないというものだ。

だが、人生の先達でもあり、「ライブ道」の大先輩でもあるオレは彼にひるむ様子を見せるわけにはいかない。まずはビールを買わなければいけないが、まず、右手に見える唯一のバーはステージを観る観客が混みすぎで、近寄ることもできない。ところが、視線を更にその先、ステージの右手一番奥までやると、そこにヒトのアタマ影がない。どうもあのへんまでいくと、2~3人は立って見入れるスペースがありそうだ。ものすごく混雑している会場でも、一番前の一番端っこ、というのは意外と余裕があったりする、というのが経験則上、オレの持論になっている。

よって2人で「決死隊」を構成し、バー経由、右端前方に移動する計画を瞬時に立てた。バーに行くのも難儀だが、「酒を買う」という大義名分がある。「ワル」オヤジ達のあいだを小突きねりあけながら、足を踏みながら歩いても(生きた心地はしないが)、自分らが酒を買うやつの邪魔になっているという自覚もすこしはあるだろう。いやな顔をしながらも、我々を通さざるを得ない。

首尾よくビールを買い(実際ビールが買えるような状態ですらないので、バー客はほとんどいない)、普通であれば今きたルートを戻るべきである。オヤジたちは前方、すなわち、こっちの方を見ているので、後ろに戻るやつは何とか通そうと試みてくれる。そうしないと自分たちが「ビール」まみれになるからだ。しかし我々の計画では、バーの先、そのさらに何メートルも先まで、混雑でまったくスキマのない中、頼りないプラスチック・コップに波々とそそがれたビールを手持ちしながら前進するのである。これから我々がかき分けて進む相手が、もし気弱な日本人でも許してくれなさそうなこの環境で、である。

だがオレは先頭を切ってすすんだ。後輩はオレの作った道をなぞればよい。頭の上に掲げたコップからはビールのしぶきがあたりに散る。気になるし、申し訳ないが、ひるんではいけない。途中で動けなくなっては、自分にとってもオヤジにとってもサイアクの状態になるのだ。すすんで2メートルもしないうちに、後ろから後輩の姿が消えていた。いや、ビールカップを持った手だけかろうじて見える。しかし、あろうことか、ビールが半減しているではないか。「やっ、やりやがった!」その瞬間、オレはその後輩が生きて最前列までたどり着けないであろう事を確信し、冥福を祈りながら無視してもくもくと前進した。そして、ついに目的地までついた。オレのビールも、やはり2割ほどは減っていた。

目指した場所が空いていた、いや空いているように見えたわけがわかった。そこは「車椅子専用席で」、オレの到着と同時に車椅子の青年も奥の控え場所からこの定位置までやって来た。今日の状態ではどうがんばっても車椅子の青年がステージを鑑賞できる可能性はない。ではあるが、オレ自身は彼の前にたちはだかる人間のカベの一番手前、すなわち、その青年にとっては The Specials ではなくて、オレの背中を見つづけるしかない、というポジションに収まってしまったのであった。

やむを得ないとはいえ、道徳上たいへん心苦しい。そして、今きた道を通って後ろに引き返すのは、物理的に不可能だ。オレにビールしぶきの洗礼を浴びた「ワル」オヤジの目もこわい。しばらくして奇跡的にここまでたどり着いた後輩をオレの後ろに通し、車椅子の青年にとっての「人間のカベの一番手前」というポジションだけは、かの後輩に差し上げたのであった。

The Specials のステージがはじまると、「ワル」オヤジ達の興奮は最高潮に達した。絶叫と暴力(ただのおしくらまんじゅうですが)、の渦巻く中で、オレと後輩が今度は「人間の盾」となって結果的に車椅子の青年を守る形になったことだけがその夜の善行であったと考えている。その後輩から、「Funga77 さん!ライブまた行きましょう!」と言ってくることは、そのあと二度となかった。

The Specials の再結成ライブも、ぬるいことにならずにコレくらいの激しいものであって欲しい、と今涼しい顔で言えるのは、あれから2年以上経ってのどもとの熱さが過ぎたからだとも思う。

Academy_islington

Carling Academy Islington (Flickr より)

ヒトがいないと、こんなカンジの場所。この距離が、無限の長さを感じさせたものだ。

2008年8月12日 (火)

Screaming Tea Party その2

< 2008. 05. 17 @ Horations Bar, Brighton, The Great Escape '08 >

オレが「ライブ道」を突き詰める活動を日々おこなっている中でも、将来にわたって決して忘れることのないであろう「不思議なモノ」を見た経験をここでお話したい。

それは今年の5月、ブライトンで開催されたグレートエスケープ('08)の3日目最終日、Horations Bar という会場で行なわれた、Stolen Recordings ホストのイベントを、かなり早めの時間から待機していたときのことだった。

この Stolen Recordings というレーベルは、オレの個人的なイチオシのバンド、Pete and the Pirates や、Let's Wrestle を擁しており、よって彼らがその夜の「トリ」と「トリ前」を務める予定になっていた。そしてもうひとバンド、一年ほど前初めて観て衝撃を受け、感動を覚えた、本邦の誇る Screaming Tea Party も全4バンド中、2番手で登場するという。このラインナップは自分にとってとにかくメインイベント級だったので、本来はあちこちの会場にいろいろなバンドを観にいくべき性質のショーケース・フェスではあったが、オレはこの日、宿泊ホテル近くの別会場で2バンドほど軽くながしたあと、この Horations Bar に一目散に向かった。この会場で当日最初に登場するバンド、名も知らぬバンドだったが「レーベル買い」で期待できそうな新人の演奏途中に滑り込んだ。Screaming Tea Party のステージがはじまるまでには、まだ時間が十分ある。

ここの Horations Bar というところに入るのは初めてだ。過去2回のグレートエスケープでもここが会場になっていたかどうか、記憶にない。それも道理で、ここはブライトン名物の桟橋に設置された遊戯施設やゲーセンに隣接した、ただの典型的なパブである。普段からライブを行なっているような場所ではない。その中の奥まったところに、無理やりステージをこさえているだけである。音響・照明・演出上、まったく期待の持てるものではなかった。

だが会場に入ってすぐ、ここも意外と悪いことばかりでもないな、と感じた。なによりスペースがかなり広い。混みすぎでせっかくのバンドが楽しめない、ということはなさそうだ。それと普通のパブなので、まわりにはソファーやらテーブルがたくさんあって、観客は立ったり座ったり、ビールやつまみを置いたりと、けっこう和やかな雰囲気が漂っている。バンドを真剣に見てない連中もいるようだが、それを含めてなんとなく「ぬるめ」の一体感があって、Stolen Recordings のアットホームイベント、という趣があって良かった。

だが、いくらアットホームといっても度を越えてはいけない。

最初のバンドが演奏中、観客の中には Screaming Tea Party を応援に来たと思しき日本人の姿がちらほらと見られた。メンバーの友人達がいるのかもしれない。そしてふと目を見やると、その方々のうちある一団が、バンドの演奏中、ステージ前の最前列にあるソファーに陣取りながら、毛布(?)を首までかけて就眠されていた。

たしかに最初のバンドは無名ということで、フロアの人影はまばら。観客は皆ビールを立ち飲みしているか、後ろのほうの連中はテーブル席などに座りながら鑑賞している。ところがこの会場がもともと普通のパブであるがために、けっこういいかげんなレイアウトになっており、なぜだかステージ前に巨大な数人がけのソファーが横向きに鎮座していた。混んではいないし座ってライブを観るのは全然アリだ。だがそのみなさんは、他にもいろいろと選択肢のある中でよりによって一番前、すなわち演奏中のバンドの目の前で、ほぼ睡眠状態になっていたように思われた。

おれもライブハウスで就寝中の方を目にしたことは何度かあるが、毛布を四隅にきっちりのばしてきれいな形で床(実際はソファーですが)についている人間の姿を見たのははじめてだ。日本人の几帳面さがうかがい知れる光景ではあったが、いかんせん場所が演奏中のバンドのすぐ手前、というか真横である。オレを含めて観客の95%にはいやがおうでもでも目に飛び込んでくるかなり不可思議なビジュアルになっていた。はっきり言うが、オレは彼らが気になってしまい、けっきょくこれをず~っと観ていたため、肝心のバンドの記憶がないのである。あきらかにバンドの「負け」であった。

当然ながら Screaming Tea Party の演奏が始まると、この一団は起き上がってステージのまん前で声援を送っていた。おれが見たのは以上だが、今日に至るまで、アレはいったいなんだったのか、自分の中で結論が出ていない。だれか答えを教えてください。

①具合が悪かった=いや、そしたらなにもスピーカーのまん前で寝なくても・・・。Screaming Tea Party のときは元気そうでしたよ。

②寒かった=うーむ、この一団は会場の中で随一の厚着、ロングコートを着用されていました。室内は、気温的としては半そでシャツでも十分なくらいでありましたが。

③とにかく眠かった=だったら、毛布かけないで寝てないふりするとか・・・。

③なにかのパフォーマンス中=たしかに見た目はアート感100%のファッションだったので、この説を支持したいです。結局バンドも食っちゃったし。

さて、そんなあとはじまった肝心の Screaming Tea Party であるが、ちょっとばかり期待にとどかないステージであった。やはり音響が悪かったのはこのバンドにとっては痛手だった。あの切り刻むようなギターのノイズが出てこないと、正直インパクトが弱い。そしてなにより残念だったのは、いつのまにかメンバーチェンジがあり、ドラマーが変更になっていたことだ。あのラテンのお姉さんがこのバンドの良い味付けだったんだが、みんな深刻な顔をしたバンドになってしまったので、オレも深刻さが移ってしまって、彼らの演奏を聴きながら自分の眉間のしわを寄せてしまいがちであった。

好きなバンドなので、もう一度良いコンデションで観ておきたい。

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@ Horations Bar

くどいが、このバンドすら、その「パフォーマー」に食われてしまった、といっても良いだろう。

Screaming Tea Party (その1)

2008年8月11日 (月)

Pete and the Pirates その7

< 2008. 08. 09 @ Paris Plages, Paris >

ロンドンで暮らしているときはあまり気にしたことがなかったが、パリにやってきて、夏一番驚くのはやはりその「夏休み」の存在だ。

他の南ヨーロッパ諸国同様、ここフランスに住む人たちも、7月・8月ともなれば、バーンと長期休暇を取る。いわゆる「バカンス」である。ゆえに会社でちまちま働いているのはパリのオフィスでも日本人ばかり、とあいなる。普段駐車スペースの激戦区となる自宅前も、この時期だけはスカスカだ。みんな長期で家を空けてしまっているのである。当然外に出ても、お店は営業していない。レストランも一ヶ月間まるまる休業だ。

とまあ、この辺のことはロンドンとは違うのだろうなあ、となんとなく想像の範囲内であった。驚いたのは、なんとライブハウスまで夏は休業となってしまうことであった。もしくは、かろうじて営業していても、客が来ないという前提で、この時期まともなライブがほとんどブッキングされていないのである。オレがよく通っている La Maroquinerie というベニューは、きっちり夏の一ヶ月間活動を完全に休止していた。

これは「ライブ道」にとってはゆゆしき問題である。あせりながら何かないかといろいろ調べたら、ひとつ夏の風物詩を発見した。

ご存知の通りパリは内陸にあり、従って海岸からは遠い。そこでこの時期地中海の海岸まで足を伸ばせない市民のために、パリ市では「Paris Plages (パリ・プラージュ)」という、その名も「パリ・ビーチ」という、ちょっとばかりしょぼい企画を毎年行なっている。パリ市の中心部を流れるセーヌ川の河畔を日光浴に飢えた市民に開放し、ビーチ・チェアやビーチパラソルなどを用意する。そしてこの「ビーチ」を作り出すために、一定の区間を自動車交通止めをしているのである。

噂には聞いていたが、いままで足を踏み入れることいはなかった。あれほど貧相な企画は他にない、とパリ在住の長い日本人から教えてもらっていたからである。だが調べてみると、この一ヶ月ちょっとのパリ・プラージュの期間を通して、小型の屋外ステージが常設され、そこで夜な夜な無料ライブが行なわれているようなのである。しかもそこに Pete and the Pitares が登場するというのだから、オレは彼らを観るためにこの人工ビーチに初チャレンジすることにした。

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まあ基本的にはこんなカンジ(写真奥にパラソル)で何がビーチなのかはよく判らないが、晴れれて暖かいのでキモチいいことだけは確かだ。ビールはうまかったが、食い物はしなびたフレンチ・フライしか売っていない。夕方からフランスのバンドが次々と出てきたが、かなりつまらなかったので、腹ごなしのために歩いて15分位のところにある行きつけのステーキハウスにひとりてくてくと向かった。大衆っぽい店なので、なんとかこの時期やっていないだろうか、と賭けに出たのだが、結果は残念ながら「夏季休業」。しかも7月15日から9月15日までの2ヶ月やすみだと。仕方なく、空腹のまま Pete and the Pirates の登場を待つことにした。

彼らもパリ公演はこれで5回目、けっこうフランスでは好意的に受け入れられているようである。この日も無料の屋外コンサートとはいえ、かなりの大観衆となった。なんといってもその夜のイベントのトリを勤める「外タレ」だ。オレは例によってがんばって、ほぼ最前列まで出て行ったが、相当の盛り上がりだったといってよいだろう。ついに外国でもこんなに人気者になるなんて・・・。とうとここまできたなあ、と個人的には感慨深いものがあった。

ボーカルの Tommy にいたっては、あからさまに覚えてきたとおりのフランス語を連発しており、オレは驚きを隠せなかった。彼らのフランス公演をあらかた観ている身としては、(初期)→観客に英語が通じるかどうか不安でぽつりぽつり。(中期)→観客は皆英語を解することが判ったので、堂々と。(そして現在)→ついにフランス語でワンウェイ・コミュニケーション。という光景が、走馬灯のように頭を駆け巡ったものである。演奏はながしているカンジもしたが、夏の屋外だしまあよしとしよう。ステージ前の最前列、オレの真横で観ていたじいさんとばあさんも大喜びだった。いい冥土の土産ができたようである。

パリ・プラージュ。「ビーチ」はビーチと思わなければ楽しめそうだ。そして夏のライブハウス休業中、そのかわりにちょっとはなりそうだな、と思った。

来週のレディング・フェスティバル('08)、初日の金曜朝、もう一度彼らのステージを観にいく予定だ。この夏の締めくくりとしたい。

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@ Paris Plages

前座のフランス人バンドを観ていたら、オレのまさに目の前をメンバー5人が通り過ぎて行った。サングラスをかけ、皆まるで芸能人のように見えた(除:リトル・ピート)。

Pete and the Pirates その1 (2007年4月~8月のライブ3回)

Pete and the Pirates その2 (2007. 10. 09 @ Barfly)

Pete and the Pirates その3 (2007. 11. 15 @ La Maroquinerie)

Pete and the Pirates その4 (2007. 11. 16 @ Fleche d'Or)

Pete and the Pirates その5 (2008. 01. 04 @ Showcase)

Pete and the Pirates その6 (2008. 05. 17 @ Horations Bar)

2008年8月 8日 (金)

Hadouken!

< 2007. 08. 26 @ Reading Festival '07, Radio One Stage >

去年 (2007) の春先だったと思うが、NME が特集を組んで「Hadouken! は時代を変える寵児か、ただのカスか」と、しきりにあおっていたことを覚えている。www.myspace.com/hadoukenuk  www.hadouken.co.uk

おそらく NME の編集部の中で、「これはたいへんなバンドがでてきたものだ!」派と、「というか、ただのゴミじゃん」派に分かれていたのだと思う。そこで、「大問題」として誌上で提起し、業界の有識者などにも意見を求めたりして、ずいぶんと大騒ぎをしていたのであった。いずれにしろ大注目株バンドだったのである。

当時 MTV2 でも曲が流れ始め、自分の琴線のど真ん中に来るものではなかったが、たしかにその時代の最先端の音のひとつであることは、なんとなく分かる気がした。正直かなり気にはなったので、4月の Camden Crawl ('07) で観にいこうと思ったのだが、予想通り会場前は長蛇の列で、あきらめざるを得なかった。時はすこし流れてその年の8月。レディング・フェスティバル ('07)では、人気を反映して新人ながらも大テントでの登場だ。オレにとっては確実に、この年のお目当てバンドのひとつであった。

さて、肝心のライブステージなのだが、けっこう残念なものであったと言わざるをえない。演奏の上手さはハナから期待していなかったが、ステージアクションやステージ運び、そして全般的な音の印象も、「ただのロックバンド」のようなものであったからだ。とすると、結論としては「演奏の下手な、ただのロックバンド」ということになる。 もうちょっと、こう何か新鮮な印象を与えてくれると良かったのだが。キラー・チューンをCDで聴くだけで十分なバンド、というのがこの「ライブ道」の評価である。

ところで、昨年のこのブログでは、「2007年を代表する音は、Hadouken! ではなくて、Help She Can't Swim だと思う。」と書いた。自分の好きなバンド、という視点だけではなく、2007年という時代を端的に、かつ主観的に言い表すとそうなる、というつもりで書いたのだ。世間的には、つまり客観的には Hadouken! が 2007 年の音、という評価なのだろうという前提である。Help She Can't Swim の活動が活発だったり、アルバムを出したり、というのは2007年以前も含むが、それでもオレの考えは変わらない。

Hadouken! を観てから一年。また夏がやって来た。今年もレディング・フェスでは同じ Radio One ステージながら、昨年の3番手から今年は6番手とビミョーにポジションをあげてきた。「昼」のバンドから「夕方」のバンドに格上げだ。だが、今年は彼らのステージを、あえては観にいかないだろう。

さて、 Help She Can't Swim のほうなのだが、ついさきごろ「解散」という悲しい知らせが飛びこんできた。悩める青年 Tom くんは、まさに Lonely Ghosts www.myspace.com/lonelyghosts  である。悲しいことだが、2008 年になって彼らはその役割を終えたのだと思う。その一方で、 Hadouken! だが、年も改まった2008 年の現在、こうして 「ロックバンド」として、生き残っていくのだな、と思った。演奏がすこしづつでも上手くなってくれば、世間的にはそれで合格だ。

Hscs_paris2 Help She Can't Swim の解散を悼み、オレが最後に彼らを観た 2007年10月11日、パリでのライブ風景を Flickr から探してきた。この翌日12日、Lille というフランスの街での演奏が、結局彼らの最後のステージになったらしい。

2008年8月 7日 (木)

The Seal Cub Clubbing Club

< 2008. 05. 16 @ The Water Margin, Brighton, The Great Escape '08 >

先日出張で東京の本社に戻ったときだ。

日本の同じ会社に所属しながらも、英国でオレとは別な会社に出向駐在しているF氏とひさしぶりに会議室で隣り合わせになった。F氏とは年齢もそんなには違わない、おっさん同士だ。彼はオレの姿を見ながらこう言った。「Funga77さんは、スマートでいいですねえ。この背広のズボン、タックなしでしょ?今イギリスでスーツ買うと全部タック無しになってません?俺、腹でてだめなんですよ。タックが2本くらいバーンとはいってないと。だから久しぶりの日本なんで、明日高島屋あたりでイージーオーダーで作ろうと思ってんですよ。タック入り。」

たしかにパンツにタックが入りまくってだぶだぶのスーツがスタンダードだった15年ほど前、オレもF氏同様そういったスーツを日ごろ着用していた。だが昨今、シャツもスーツも確かにスリムがベーシックのポジションを取ってしまったため、だぶだぶの服は見た目も明らかに時代遅れだ。F氏の会社はロンドン繁華街のど真ん中に位置するが、近くの百貨店に行っても時代遅れの洋服を買うのはむずかしかろう。

かく言うオレ自身も、「ライブ道」をつきつめる為に、日ごろから努力して「若作り」をしているのであって、実際の体型は、「やせているのに腹が出ている」あからさまな中年体型だ。スリムスーツは実際多少の無理がある。だが、無理をしてでもこれを着るところにのみ「若作り」の極意と心意気があるのであって、この苦しい努力を止めるわけにはいかないのである。F氏に対しては、「そおかあ~。オレもやっぱりタック入りの楽チンズボン買おうかなあ~。こっちで。」と、適当に話をあわせた。

ところで、そうは言ってもスーツの場合はまだ良い。そもそもピチピチのビジネススーツなど存在しないし、そんなものがあっても仕事にならないからだ。問題は、本当の若作りをしなければいけない、「ライブ会場」プラス、「フェスティバル会場」でのファッションである。ここ数年、極端なスリムジーンズがスタンダード化したこともあり、オレも2年前に一本 Top Shop (Topman) で買ってみた。足は人より細いので、なんとか入る。だが腹はものすごくキツイぞ。自分のウエストサイズでインチを選んで買ったのだが、立ったままの試着室では何とかなるものの、座ったり、立ったりも苦しい。メシ食ったらオワルぞ、これは。

そんなわけで、このスリム・ジーンズ。過去2年間の出動回数はたったの数回なのだが、コレを捨てられない、あるいは「今回は履いてみよう」と頻繁に試みてしまうのは、ライブを観にいけばバンドの連中はみなスリムをはいており、そして観客の小僧達も皆スリムパンツだからだ。彼らの年齢の3倍歳を食っているオレが対抗意識を燃やすこと自体、そもそも間違ってはいる。だが、若作りが続けられなくなったらそれは「ライブ道」を続けられなくなったことだと考えているので(ちょっとウソです)、オレは挑戦し続ける。・・・まあ、あほですな。

ところで、今年に入ってすこし風向きが変わってきたような気がする。世の中スリム一辺倒でもなくなってきたように思われるのだ。最近の新人バンドを観ても、スリムをはく「ふんぎり」がついにつかなかったというよりは、スリムをはかないことを信条にしているようなバンドに出会うようになってきたからである。

今年のグレートエスケープ ('08)。 Artrocker マガジンがホストする会場で、オフィシャルのプログラムには載っていないが、協賛のイベントとして昼過ぎから夕方まで毎日面白い連中がステージを勤めていた。そのうちのひとつがコイツら The Seal Cub Clubbing Club である。www.myspace.com/thesealcubclubbingclub

彼らの音、そしてライブをなんと表現したらよいか。ひとことで端的に言うと、「スリムパンツをはかないサウンド」、である。近頃では、フォークシンガーやらハードロックバンドでも新人は皆ステージではスリムパンツをはいている。みんな、迷いがあるのかもしれない。だがこのバンドの連中には迷いが感じられなかった。俺たちは履かないよ、スリムは。そう語りかけてくるようなパフォーマンスなのであった。

彼らのような音が時代の中心に少しでも近づいてくると、世の中スリムパンツの呪縛からすこし離れて、ちょっとだけ暮らしやすい、若作りしやすい社会になってくるのではないか。そんな気がしてちょっと応援してあげたいバンドだな、と思ったのだった。

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@ The Water Margin ( Photo : from Flickr )

この日のこのバンドの写真はうまく撮れなかったので、だめもとで Flickr で探したら、なんとあった。ホント、なんでも貼り付けてあるんですね。確かこのとき真剣に写真撮影していた人はひとりかふたりしかいなかったような気が・・・。残念ながら、このカメラマンは、かんじんなこのバンドの下半身には注意がいかなかったようである。

ところで蛇足ながら「スリムパンツ」シンドロームはあくまで英国の話であって、フランスでは違います。ムッシューたちは、世間の流行りすたりに流されず、というか皆オレ様なので、もっと勝手気ままな格好で演奏し、鑑賞をしております。

2008年8月 6日 (水)

You Say Party! We Say Die!

< 2006. 08. 27 @ Reading Festival '06, Carling Stage >

< 2007. 06. 23 @ Glastonbury Festival '07, John Peel Stage >

さて、どうにも気に入らない虫の好かないバンドというのがオレにはある。

はなから自分の守備範囲外といったミュージシャン、たとえばジャック・ジョンソンを好きだの嫌いだのという類の話ではない。ふだん信頼して接しているメディアからもそれなりの評価をされ、自分のお気に入りのフェスティバル・ステージに呼ばれているバンドなのに、期待して観にいったら、怒りがこみ上げてきた、という手合いである。いままでいろいろなフェスティバルにおける『がっかり大賞』を勝手に発表してきたわけだが、数あるバンドの中にはそんな冷静な評論ではなく、もっと本能の趣くままに心の叫びを発散したくなってしまうような連中もいるものなのである。

その代表格、というか、ほぼコイツラ限定でオレの感情逆なでキングなのがこのバンド、You Say Party! We Say Die! だ。 www.myspace.com/yousaypartywesaydie  www.yousaypartywesaydie.ca 初めて観たおととしレディング・フェス ('06) のステージでオレはキレた。なんじゃこりゃ、と。 

このように、なぜそうなのかというまったく理論的に説明できないことを勝手に書きなぐって良いのがブログのよさではあるのだが、あえて落ち着いて分析を試みると、ここのボーカルの女性の声質にその問題の源を見つけることができる。いや、歌唱法もか。そして曲ももちろん、で見た目もだ。じゃあ、結局全部ダメだ、やっぱり勘弁してくれ、というはなしであった。

音楽フェスティバルの良いところは、こうした「逆なで」系はもちろん言うに及ばず、「がっかり」や「はずれ」にあたればすぐその場所を移動して別なステージを観にいけることにある。オレは怒りが増してきたが、少しだけ気を取り直して彼らのステージをあとにしたのであった。

一方、逆に音楽フェスティバルの気をつけなければいけないところは、何も考えずにステージを渡り歩いていると、観たくもない連中に出くわしてしまうことが意外とよくあることである。一日の最初に立てたスケジュールが、天候状況その他で狂ってしまったときなど、本来予定してない時間に予定してないステージに足を取られていたりすることが、ままあるのであった。

昨年のグラストンベリー・フェス ('07) で、悪天候のため、予定時間を越えて一ヶ所のテントにこもってビールを飲んでいたら、次にバンドが登場したと思うや聞き覚えのあるトーンでイキナリ神経を逆なでされた。ヤバイ、あいつらだ!と思ったが、テントの外は雨模様&泥の海。脱出の意思を完全にそがれ、廃人となって瞑想状態に入った。失敗した。完全に作戦ミスである。悪天候による疲労で判断力が鈍っていた。避けがたい事態だったのかもしれないが、もしかしたらもっと早い時間に別なテントに行く、という戦略もあったかもしれない、とも後悔する。

冷静に考えればそんなに嫌わなくてもいいのかもしれないが、今や自分の中では「このバンドを観てしまうと、自分にとってそのフェスティバル自体が台なしになる」というレベルの縁起の悪さに格上げされてしまったので、もはらそいつらの問題ではなくて、オレ自身の問題である。

もうすぐ今年のレディング・フェス ('08) であるが、オレはいつものように、You Say Party! We Say Die! の MySpace ページまで行った。「フレンド」ではないので、わざわざ検索して、である。そして今回のフェスには出ないことを確認し、安堵してどのステージを回るのかの作戦作りに没頭できるのである。そんな扱いを受けるバンドっていったい何なんだ、という気もするのではあるが。

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@ '06 Reading   (Photo : from Flickr)

なんとなくですが、ちょっとムカつきませんか?そうでもない?失礼しました。

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@ '07 Glastonbury (Photo : from Flickr)

臥薪嘗胆のつもりで、当時の現場写真を探してきて貼り付けました。

* こちらからコメントバックできないので、追記します:

やっぱり、ムカつくやつらなんだ・・・・コイツら。

2008年8月 5日 (火)

Figure 5

< 2008. 04. 19 @ The Monarch, London (Camden Crawl '08) >

ロンドンの街を歩いていると、突然行き倒れのじいさんに出くわすことが多くて驚く。

それも「行き倒れ」てからしばらくの時間が経過し、周りには人だかりができて救急車がじいさんの介抱をしている、というのでは全然なく、つい直前に倒れたばっかりで、人通りが多いながらもオレがほぼ第一発見者、という手合いが少なくないのである。

当然オレはひるんであとずさりし、どうしたものかとパニック状態に陥っていると、近くの若者達が気づきだして手を差し伸べたり救急車を呼んだりする。同時に自分も我に帰ってホッとするのであった。これは決してオレがいざというときに役に立たないダメなヤツ、というだけではなく、イギリスの通行人は、行き倒れのじいさんに慣れているのだと思う。いやそう思いたい。

なぜ日本では行き倒れのじいさんが少ないか。これはやばそうな老人は万が一のことがあっては取り返しがつかないので、心配して外に出さない、という家族の気遣いがあるのはもちろんだろう。だがその一方で、外で倒れて人さまに迷惑をかけては気が引ける、という家族の心配もあるに違いない。かくしてヨレヨレの爺さんは、日本ではなかなか外出の機会が与えられなくなっていき、世間から隔絶されていく。一方で、ここイギリスでは人様に気を使うよりは、じいさんのフリーダムだ。万一倒れたって、周りのみんながなんとかしてくれる。当たり前だ。

こういったヤバそうなじいさんたちだけでなく、そういえばわが本邦ではいわゆる「身体障害者」の方々も世間から隔離されてしまう確率が高い。そんな気がする。いまは昔ほど極端ではないのかもしれないが、それでも「障害者」外出散歩率が英国の方が日本に比べて圧倒的に高い印象があるのは単なる気のせいだろうか。ロンドンのライブハウスにはよく「小人症」の方が観客として来ているし(「小人症」の方を障害者といってよいかどうかわかりませんが)、車椅子の観客は圧倒的に多いだろう。障害のある方も、フツーにそして積極的に「ライブ道」に参加している、そんな印象がここロンドンではあるのであった。

さて、そんな偽善者っぽい発言をしているオレではあるが、実はまんま偽善者であることがハッキリするという出来事が起こった。

今年の Camden Crawl '08 の2日目、オレは MySpace であらかじめチェックをしておいた Figure 5 というバンドを観るため、早めに会場についた。www.myspace.com/figure5  www.figure5.co.uk 今となってはすこし懐かしいような典型的なマンチェスター系サウンドのバンドである。

バンドの登場を待っていると、観客の中に両腕の肘(ひじ)から先がない男性の姿が目に入ってきた。黒い半そでシャツを着ているからその様子がハッキリわかる。たぶん後天的なものではないかとは思うのだが、いわゆる「障害者」の方だ。でも彼もこのバンドが好きで観にきたに違いない。決して混んでるとは言いがたかったが、彼はこんな体でも自分の応援したいバンドのライブを観るために、ここまでやって来たのに違いないのであった。そう思うと、少しだけだがなにやらこころ暖めるものを感じた。

ところで、いよいよバンドの準備が整い、こちらもビール片手にステージ前まで駆けつけた。そして、なんとそこで見たものは、先ほどの肘から先の手のない方が、このバンドのドラムキット前に座っている姿であった。「えええっ!!!」

よく見ると、件の彼は自分の肘まわりに専用の革ベルトを巻きつけ、そのベルトの先からは驚くべきことにドラムスティックが装着されているのであった。両腕とも。そして演奏が始まるや、まったく健常者と変わらないスティックさばきで、力強いドラミングを始めたのである。ハッキリ言って、オレの目はもうそこに釘付けであった。すなわち、そのバンドがどうかということよりも、今やオレの興味はたぶんそこにいた他の観客達と同様に、そのドラマーがいかなる演奏しているかを見ることにそそられていたのである。

実際、バンドの力量自体は MySpace で聴いた期待を超えるものではなかった。正直に言ってしまえば、ちょっとハズレである。だが、「見物(みもの)」としては、一生忘れることのないバンドであったことは間違いない。オレはなんとなくだがドラムばっかりじろじろ見てはいけないのではないか、という気持ちにかられつつ、思い出したようにボーカルの姿を見ては気もそぞろになりつつ、視線をまたドラムに戻すのであった。

写真を何枚も撮った。でもドラムの腕を中心とした写真はなぜだか結局撮ることができなかった。自分は偽善者だな、と思った。じいさんが行き倒れては、自分が恥ずかしい、と考えている家族と同じだ、となんとなくだが思った。ちょっと違うかもしれないが。

Fleche_dor_20080329_038

@ The Monarch

ドラムは左端。首から上のみ。

このドラマーのことがどうしても気になる方は、こちらに。カッコよかったよ。

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