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2008年8月14日 (木)

The Specials (fea. Neville Staples)

< 2006. 04. 01 @ Carling Academy Islington, London >

The Specials 自体は同時代に聴いていたのだが(市松模様Tシャツとかも、買いましたよ)、姿を見たことは一度もなかった。でも、当時はとにかくカッコ良い音だった。

Terry Hall という人はかなり才能ある人のようで、どれも長続きはしないがなかなか味のあるプロジェクトが多かった。1985年ごろの The Colorfield は良いメロディの曲が多かったし、「ブリティッシュ・ポップの職人」という怪しげな枕詞のついていた Lightning Seeds のアルバムの中でも、Terry Hall が書いたと思われる曲以外は、「カス」感が漂っていたことをおもいだす。最近でも Dub Pistols のボーカルに参加して、フェスティバルなどでも積極的に活躍しているという印象があった。

彼自身が The Specials 自体をもう一度やる気はあまりなかったようだが、昨年 ('07) のグラストンベリー・フェスティバルでは Lilly Allen のステージに飛び入りして [Gangstars] を唄ったり、それよりもっと小さなステージでは Damon Albarn が弾くピアノに合わせて [A Message To You, Rudy] を唄ったりしたらしい。(もちろんそれらのライブを自分は観ていないのだが、夜グラストンベリーの会場からホテルに戻ってBBC にチャンネルをあわせたら、当日のダイジェストとしてLilly Allen with Terry Hall をまさに放映していた。ちょっとだけ「観たかったな」と思った。)

どうやらコレが彼のウォーム・アップだったようで、どうも今年の秋からオリジナルメンバーをかき集めて The Specials を再結成し、ツアーを行なうようである。いろいろある「再結成」バナシのなかでも気になる物件なので、タイミングが合えば足を運んでみたいものだと思っている。

ところで、The Specials 解散後それぞれのメンバーも各自音楽キャリアを積んでおり、Terry と Fun Boy Three を一緒に組んだ黒いお兄さん Neville Staple も、更にそのあとは「なんちゃって Specials 」的な音楽活動をしばらく続けていた。すっかりオヤジになった一昨年('06)、ついにThe Specials 名でツアーを開始したので観にいくことにした。もっとも、キーマンは彼だけという、一人スペシャルズ、ではあったが。

この日のライブは今でも強烈な印象と共に、記憶に残っている。

演奏自体はどうということもなかった。おなじみの曲が多いとはいえ、やはり主旋律はTerry Hall 氏のカン高い声でないとピンとこない。オリジナルのボーカリストではあるものの、Neville の歌声は、やはり「他人」が歌っている感はまぬがれない。おどろいたのは、この会場に入りきらないほどあふれかえった観客である。さすが腐っても鯛、黒いおじさんだけでも The Specials 、である。その数もさることながら、「質」は言語に尽くしがたい、「ワル」オヤジの集団となっていた。チョイワル、とかそういうレベルではない。「本」ワルのかたまりである。20数年の月日を経て当時の Gangstars が総結集したかのような壮観であった。普段、不良の小僧集団を目にすることはあっても、このような体験は始めてであった。

数年前、 999 というオリジナル・ロンドンパンクバンドの成れの果てをロンドンのどこかのさびれたパブに見に行ったが、そこも「ワル」オヤジ(+一部「ワル」オバ)によって客層が構成されていた。だがそのときの観客数はせいぜい100人。だれもがフロアを自由に移動できた。しかしこの日はレベルが違った。まさに「蟻の通るすきまもない」ほどの「ワル」が何百人いるのかもわからない。オレがこの日連れて行った会社の後輩(日本人青年男性:ロンドンライブ初体験)は、会場に入るや固まったまま微動だにしない。おそらく瞬間的に石になったか、急性トラウマになったかのどちらかだろう。「ワル」オヤジ達の暴力沙汰に巻き込まれ万一のことがあっては、日本にいる親御さんにも申し訳ないというものだ。

だが、人生の先達でもあり、「ライブ道」の大先輩でもあるオレは彼にひるむ様子を見せるわけにはいかない。まずはビールを買わなければいけないが、まず、右手に見える唯一のバーはステージを観る観客が混みすぎで、近寄ることもできない。ところが、視線を更にその先、ステージの右手一番奥までやると、そこにヒトのアタマ影がない。どうもあのへんまでいくと、2~3人は立って見入れるスペースがありそうだ。ものすごく混雑している会場でも、一番前の一番端っこ、というのは意外と余裕があったりする、というのが経験則上、オレの持論になっている。

よって2人で「決死隊」を構成し、バー経由、右端前方に移動する計画を瞬時に立てた。バーに行くのも難儀だが、「酒を買う」という大義名分がある。「ワル」オヤジ達のあいだを小突きねりあけながら、足を踏みながら歩いても(生きた心地はしないが)、自分らが酒を買うやつの邪魔になっているという自覚もすこしはあるだろう。いやな顔をしながらも、我々を通さざるを得ない。

首尾よくビールを買い(実際ビールが買えるような状態ですらないので、バー客はほとんどいない)、普通であれば今きたルートを戻るべきである。オヤジたちは前方、すなわち、こっちの方を見ているので、後ろに戻るやつは何とか通そうと試みてくれる。そうしないと自分たちが「ビール」まみれになるからだ。しかし我々の計画では、バーの先、そのさらに何メートルも先まで、混雑でまったくスキマのない中、頼りないプラスチック・コップに波々とそそがれたビールを手持ちしながら前進するのである。これから我々がかき分けて進む相手が、もし気弱な日本人でも許してくれなさそうなこの環境で、である。

だがオレは先頭を切ってすすんだ。後輩はオレの作った道をなぞればよい。頭の上に掲げたコップからはビールのしぶきがあたりに散る。気になるし、申し訳ないが、ひるんではいけない。途中で動けなくなっては、自分にとってもオヤジにとってもサイアクの状態になるのだ。すすんで2メートルもしないうちに、後ろから後輩の姿が消えていた。いや、ビールカップを持った手だけかろうじて見える。しかし、あろうことか、ビールが半減しているではないか。「やっ、やりやがった!」その瞬間、オレはその後輩が生きて最前列までたどり着けないであろう事を確信し、冥福を祈りながら無視してもくもくと前進した。そして、ついに目的地までついた。オレのビールも、やはり2割ほどは減っていた。

目指した場所が空いていた、いや空いているように見えたわけがわかった。そこは「車椅子専用席で」、オレの到着と同時に車椅子の青年も奥の控え場所からこの定位置までやって来た。今日の状態ではどうがんばっても車椅子の青年がステージを鑑賞できる可能性はない。ではあるが、オレ自身は彼の前にたちはだかる人間のカベの一番手前、すなわち、その青年にとっては The Specials ではなくて、オレの背中を見つづけるしかない、というポジションに収まってしまったのであった。

やむを得ないとはいえ、道徳上たいへん心苦しい。そして、今きた道を通って後ろに引き返すのは、物理的に不可能だ。オレにビールしぶきの洗礼を浴びた「ワル」オヤジの目もこわい。しばらくして奇跡的にここまでたどり着いた後輩をオレの後ろに通し、車椅子の青年にとっての「人間のカベの一番手前」というポジションだけは、かの後輩に差し上げたのであった。

The Specials のステージがはじまると、「ワル」オヤジ達の興奮は最高潮に達した。絶叫と暴力(ただのおしくらまんじゅうですが)、の渦巻く中で、オレと後輩が今度は「人間の盾」となって結果的に車椅子の青年を守る形になったことだけがその夜の善行であったと考えている。その後輩から、「Funga77 さん!ライブまた行きましょう!」と言ってくることは、そのあと二度となかった。

The Specials の再結成ライブも、ぬるいことにならずにコレくらいの激しいものであって欲しい、と今涼しい顔で言えるのは、あれから2年以上経ってのどもとの熱さが過ぎたからだとも思う。

Academy_islington

Carling Academy Islington (Flickr より)

ヒトがいないと、こんなカンジの場所。この距離が、無限の長さを感じさせたものだ。

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