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2008年9月11日 (木)

Ash

< 2001. 05. 11 @ The Ocean, London >

< 2002. 08. 24 @ Reading Festival '02, Main Stage >

< 2008. 09. 06 @ The Astoria, London >

All Tomorrow's Parties (オール・トゥモローズ・パーティズ=ATP)という、ヴェルベット・アンダーグラウンドの名曲タイトルを、そのままイベントタイトルに持ってきた音楽フェスティバルがイギリスで催されている。いまやそれなりの歴史を持ち、確固たるポジションを築いているイベントだ。「明日をになう」、あるいは「明日を先取りする」といったあたりの意味合いなのだろうか。いずれにしろ、いまや日本でも知られた存在になってきていると思う。

このフェスティバルに出演するバンドのラインナップは明らかにその他のイベントと趣を異にしており、だいたいが玄人筋から評価を受けそうなアングラ系のバンドが大半を占めている。そのたいていは見たことも聞いたこともない連中なのだが、さすがにメインアクトあたりには Mogwai やら Yo La Tengo といった名前が見える。おそらく週末の3日間、めいっぱい繰り広げられるインディ感100%のこのイベントには、かなりコアな音楽ファン&おたくが結集するに違いないと思われるのである。コドモが生半可に手を出せない、濃いイベント、というのがオレの印象だ。

オレ自身は Mogwai や Yo La Tengo をリスペクトしているのではあるが、このフェスティバルだけは及び腰で、いまだに参加したことがない。で、50歳に手が届こうとしている昨今ではあるが、もうすこしオトナになってからでないと観にいってはいけないような気がしているのである。

ところで、今日のテーマは直接この ATP とは関係ない。関係ないが、実はこの ATP というオーガナイザーはこうした「アングラ」フェスティバルのほかにも各種いろいろな音楽イベントを主催しており、それぞれなかなか趣向が面白い。そのひとつに、これまた歌のタイトルから取った Don't Look Back (ドント・ルック・バック)という企画が時々あるのだが、それはなにかというと、Sonic Youth や Dinosaur Jr といったレジェンド系のバンドに、彼らの過去のある特定のアルバムだけをフルに演奏してもらう、という催しだ。

これはなかなか冴えたアイディアだと思う。「あのバンドに、あのアルバムの曲だけライブで演奏してもらいたい」というのは、意外な潜在意識としてヒトビトの気持ちの中にあると思うからだ。だがそうした企画は、現実のところあまり頻繁にはみられない。ATP の場合は、そういうトライアルを試みる余裕を持った、すでに「伝説」化しているようなバンドにプラスしてATP というブランドネームがくっついているので、なんとか成り立っていると思う。しかし現役のバンドがフツーにコレをやってしまった場合、「昔は良かったが最近どうもいまひとつなので、過去の曲と過去のファンに頼るのか?」という、ちょっとうがったネガティブな評価をされてしまいがちだからである。やはりミュージシャンとして、現役で新曲を出し続け、新アルバムをプロモートしなければいけない立場では、現実になかなかできる企画ではないのだと思う。ATPから呼ばれていないのに、つまり誰からも頼まれていないのに、みずから進んでこういったことをするミュージシャンは結果的に少ないのであろう。

ところで、いまだ「伝説化」まではしていないバンドでも、条件さえととのえば、こうした企画で我々ファンを楽しませてくれることがある、という経験をしたのが先週の Ash のロンドン公演だった。かれらはデビュー・アルバムである [1977] をそのままイベントのタイトルにしたライブで、そこに収録されている懐かしい曲すべてを演奏するとあらかじめ告知していたのである。

オレにとっては [1977] こそが Ash のすべてであり、そのあとは数々のヒット曲を含めて彼らの余生のようなものだと考えている。このアルバムは、それが世に出た1995年の間違いなく最高傑作だと思っている。同時に、そのあとの曲はMTVで流れているのを見れば、オレにとってはもう十分、という存在であった。だから Tim の音楽に対する姿勢などには共感ができる部分があるものの、もうわざわざライブを観るようなことはあるまい、と勝手に思い込んでいたのである。

ところがNMEに載っていた広告に、「[1977] をフルで演奏するライブ」と書いてあったものだから、ビッグ・サプライズであった。もちろん、うれしい驚きと同時に、こんなことやっちゃっていいの?という心配の入った驚きもである。オレのように「[1977] 以外はいまひとつ」と考えている人間からしてみると、「こっちはうれしいけど、世間的に『最近どうもパッとしないんですよ・・』と宣伝していることになりはしないか、そんなことより新曲売る心配しなくて良いのか?オマエら、まだそんな、『過去の大物』じゃあねえだろ・・」などなどと思ってしまったのである。

満員でごった返した会場の Astoria では、予想通り「年配」感のある客でにぎわっており、イマドキのコドモタチの姿は見られなかった。だが、楽しそうに演奏する Tim の姿を見ながら考えたのだが、いまの彼らにはこういった企画のライブをおこなうだけの理由が十分あることに気がついた。

Charlotte Hatherley が抜けてもとの3人編成にもどったわけだから、初心に帰って3人でこしらえた [1977] を演奏するというのは、新たなスタートとしておあつらえむきではないか。よく考えたらもうアルバムを発表しない、シングルしか出さない、と宣言しているのだし、ニュー・アルバムのプロモーション・ツアーも必要ないわけだ。そんなわけで、Ash としては今回のような「自主的 Don't Look Back」企画を催すのに必要な条件が整っていたわけだ。

背景はどうであれ、結果的に [1977] をフルで堪能できて、大満足な夜であった。もっとも「本編」のライブは当然ながら40分くらい(アルバム一枚分)で終了してしまうわけだが、そのあとそれよりも長い時間の「アンコール」が延々と繰り広げられ、「余生」に入ってからの各種ヒット曲はもちろん、 [1977] にも収録されていないデビュー・シングルや、スター・ウォーズがらみの楽曲等々、やりたい放題のステージであったのはご愛嬌である。

どんな屁理屈や言い訳をつけても良いので、こういった企画を他のバンドもどしどし行なってほしい、というのは勝手ではあるが音楽ファンの願いだと思う。

2008_09_019

@ Astoria

オレより一回り以上若い「オヤジ」客でごった返した会場は、皆満足げであった。

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