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2008年9月23日 (火)

Cage the Elephant

< 2008. 08. 24 @ Reading Festival '08, Festival Republic Stage >

先月のことになるが、東京の本社にいる同僚から一本のメールが届いた。ずいぶん前に同じ部に所属していたことのある同期入社の人間だ。

彼によれば、15年ほど前の当時わずかな期間だけその部の部長をしていたおじさんが、定年を数年残して会社を辞めるという話だった。で、当時の部員が集まって、なつかしい顔ぶれだけの送別会を開きたい、というお知らせなのであった。いまやオレを含めてほとんどの「元」部員が、そのおじさんの当時の年代になってしまったわけなので、かなり「じじい臭」のする飲み会になるに違いない。是非駆けつけて皆の変わり果てた姿を肴に酒を飲みたいと思ったのではあるが、いかんせんここは遠い異国。残念ながら不参加の返信のかわりに、僭越ながら当人に激励文を送らせていただくこととした。

この会に参加できなくて残念だと思ったののは、もうすこしだけ深い訳がある。

当時この「元」部長と、オレやオレの同期を始めとした「元」部下全員は、正直言ってかなり折り合いが悪かった。いろいろなことの積み重ねで、最後の方にはかなり険悪な雰囲気になっていた、と思う。本人もその部を出たいと考えるようになっていたみたいだし、我々の方も彼をその部から「追い出す」ようなアクションを取ったりしたこともあった。

15年の歳月を経て、まさに『恩讐(おんしゅう)の彼方に』ではないが、あのとき「お互い若かったな」という雰囲気が、コトバにはださなくても感じられるような場を共有することができれば、なんとなくだが自分自身に対するわだかまりも解けるような気がしたのである。彼も初めて「部長」になった稚拙な新米上司だったかもしれないし、我々も自分たちで解決できないことを、ただただあたりちらす無能でわがままな部下だったかもしれなかった。だから、「おつきあい」ではなく、できれば彼の送別会に出席したかったと思ったのである。

ところで、オレにはその「元」部長の忘れられない姿がある。彼が我々の部に着任したまさにその日、歓迎会が開かれた。この会社にしては珍しく、全く別の部署から部長になるためやってきたその人は、我々部員からは「未知」の存在であった。彼から見たわれわれもそうだったに違いない。お互いに、けん制しながらも期待を持って初顔合わせである「歓迎会」の宴席に臨んだのだ。

とりあえず和気あいあいとしたまま一時会は終了し、二次会のカラオケボックスに10人ほどでなだれ込んだ。誰かが景気づけに1~2曲歌いだして盛り上がりはじめたころ、オレは小用をたしにトイレのドアを開けた。そこで出会いがしらに見たものは、件(くだん)の元部長が鏡を真剣な表情で覗き込みながら、今まさに自分の首からはずしたばかりのネクタイをハチマキ代わりにアタマに巻きつけている、そして巻き付け方を微調整している、実にその瞬間だったのだ。

オレはかなり見てはいけないものを見てしまった気がして、急に千鳥足風で「♪なっかあのしい~まあ、ぶうるううすよお~っ。」などと酔っ払ったふりをしながら元部長に気づかないふりをして便器の並んでいる方向へ一目散に向かった。これは明らかに、「いい心持ちになって盛り上がっているオヤジサラリーマン」を演出している作為以外の何者でもない。そしてその姿のまま、今まさに宴たけなわになりつつあるカラオケボックスに再乱入することで、場の雰囲気を一気に盛り上げよう、部員のこころをひとつかみにしてしまおう!という戦略に違いないのであった。

通常は(そもそも通常は、そんなオヤジなどいまどきいないのであるが)、興が高じて「ネクタイハチマキ」に自然に移行すべきものであるところ、その「新」部長は新しい上司としての自分と部下との距離を一気に縮めるために、ある種「禁じ手」の荒業に手を染めたものと思われる。オレはこのことで、「人間ってヤツは、場を盛り上げるためにこんななことをしてしまう生き物なんだ」ということを学んでしまったのである。もしトイレでこの一件を目撃していなければ、自分の見逃したスキに、酔いに興じた部員が部長のネクタイをはずしてそのアタマに結びつけた、くらいにしか考えなかったであろう。そしてたぶん、オレと部長の関係も、一気に親しみのこもったものになっていたかもしれないのだった。

今回の送別会、当時の当事者双方に、この一件が実際のところどんな雰囲気をかもし出したのか、あらためてちょっと聞いてみたかった。もう誰も覚えてないかもしれないが。でもオレはとにかくこの部長とのあいだの良かったことも悪かったことも、ほとんど何にも覚えていないのだが、このことだけはふとした拍子に頭の中によみがえる。

というあまりにも長い前フリだが、先月のレディング・フェスティバル ('08) で、そのときのネクタイハチマキの一件が、一瞬にしてクリアに呼び起こされる出来事があった。 アメリカの新人、Cage the Elephant のボーカルの Matt がステージに登壇した瞬間だ。www.myspace.com/cagetheelephant

今年のグラストンベリー・フェスでも見逃していたので、レディングでは最も期待していたバンドのひとつだった。ステージ上に現れた彼のいでたちは、まさにフェスティバル3日目の最終日、週末通してたっぷりと楽しみまくった観客のスタイルそのもの、であった。上半身ハダカ、そしてカラダには蛍光色のいい加減なペインティング、腰には売店で売っているようなフリフリの女性物、とにかく全身小汚く薄汚れた格好などなどとにかくこのフェスティバル会場で、何日間も徹夜続きで遊び通した「証拠」を身に満載にまとっているのであった。そこにいるのはミュージシャンの姿ではなく、あきらかに、いわゆる Festival Goer というか、会場で大騒をしながら大いに楽しんでいる観客の姿そのものであった。

もちろん、この日朝から彼が会場の中でこのフェスティバルをたっぷりと堪能していた可能性はある。リーズ・フェスティバルで演奏したあと、テント代わりにバンで寝食をとればあれだけすっかりその場に馴染んだ格好になることも有りえるだろう。だがオレは突然にして例の元部長のことが頭をよぎり、こいつ、Matt はステージ直前になってフェスティバル観客に馴染んだ格好を「化粧」してきたのではないか?という疑いを持ってしまった。

万がいち仮にそうだとしても、悪意は無いしかわいらしい話なので罪はない。だが、オレとしては当時のビミョーなキモチがよみがえり、なんとなく見てはいけない姿がバックステージであったのではないか、などと想像力がたくましくなってしまった。そのため肝心のステージに十分な集中ができなくなったのである。ステージ後半に客席への乱入を繰り返す彼の姿を見るにつけ、英国のミュージシャンに時々ありがちな「照れ」や「てらい」が全くない、まさにアメリカン・エンタテイメントの真髄を垣間見た気がして、「つくり」くらいはやりかねないという確信さえ芽生えてしまった。彼らの演奏は、そういったアクションやパフォーマンスを含めてとても良かったと思うのだが、オレ個人の小さなトラウマが、自分自身の完全燃焼を妨げてしまったのも事実である。

後日、彼らの MySpace を見るにつけ、そこに貼り付けてあるレディング・フェスティバルでの夜間キャンプサイトのゲリラ・ライブ映像や、先日の Bestival での泥にまみれた格好での映像を見るにつけ、ヤツラは実は「つくり」ではなく「ホンモノ」であった疑いが濃くなってきた。そう、実際に観客と一緒になって本当によれよれの格好になってしまったヤツラだったのか?そう思うと、当日、もっと素直に彼らのステージを楽しむべきだった、とも後悔する。真相はわからないままなのだが、オレ自身が毎晩ホテルへ帰ってはシャワーと着替えをキッチリ済ませてから毎朝フェスティバル会場へ向かう、「ひよった」人間なので、ひねくれて考えすぎてしまったのかもしれない。

この「ネクタイ・ハチマキ」のトラウマを克服するために、次回 Cage the Elephant のライブでは、バンドメンバーのいでたちを完全にまねして作りこみ、ステージからボーカリストとツイン・ダイブを試みるくらいの意気込みで臨みたい。そんなことを考えた。

@ Reading '08 キャンプサイト

で、下がオレが撮ったステージ写真

Reading_2008_120

こんな格好で登場したので、最初から仲間感100%のたいへんな盛り上がりようであった。

* コメントバックができないので、追記します:

● そうですね。言葉の壁、まったくないですよね。うらやましいです。さらにプラスして言わせてもらえば、年齢の壁も人種の壁もないともっといいのですが、「ライブ道」はメガネをかけた日本人中年サラリーマン(風がふくと髪型が2:8分けになる)なので、壁がありまくりなのが残念です。

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コメント

このキャンプサイトでのゲリラライブ、いいなー。言葉の壁がないって、いいなー。

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