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2009年2月13日 (金)

Ladyhawke

< 2009. 02. 12 @ Nouveau Casino, Paris >

そのむかし「ロンドンは燃えているぜ!(London's Burning)」と絶唱したのは故ジョー・ストラマー氏だが、当時高校生であったオレにはいったいどれくらいスゴイ燃え方なのか、想像すらできなかった。世間に対する不満と退屈が鬱積(うっせき)した不良の集団が夜な夜な街中を闊歩している姿を思い浮かべるだけでかなり失禁してしまいそうな恐ろしさではあった。

月日は流れて昨今。不況だ不況だと騒がれる前からパリは実際に燃えていた。近年、年の瀬が近づくと、パリ周辺のいわゆる「郊外」と呼ばれているエリアでは、失業率の著しく高い移民系の若者が中心となってその辺に停めてある自動車に火をつけ、何千台単位で燃やすのである。もちろん、パリ市内でもクルマは燃やされる。大統領のサルコジは激怒するが、どうにもならない。社会の底辺に押し込められた奴らの、怒りにまかせた集団暴動である。とても先進国とは思えない無法ぶりだ。そしてオレは今、そんなアツいパリに暮らしているのである。

そんなおり昨年後半にかけてイギリスでヒットした[ Paris is Burning (パリは燃えているぜえ!)]。唄うはニュージーランド出身のLadyhawke こと Phillipa "Pip" Brown だ。www.myspace.com/ladyhawkerock , www.ladyhawkemusic.com 彼女はかつて初めて訪れたパリで、街が燃え上がるさまを目の当たりにし、その驚きで曲をしたためたに違いないのであった。

ところで、神奈川に住む友人から聞いた話だが、むかし名優のバンジュンこと伴淳三郎が亡くなったその直後、神奈川TVで彼の出演しているCMがまだ流されていたらしい。それは箱根かどこかの温泉のCMで、湯船にどっぷりつかった伴淳が、至福の表情で「ああ~、生き返るわあ~。」と言うものらしく、当然ながらその友人は腰を抜かしたそうである。これを見た人は、故人にキチンと成仏してくれるよう、TVに向かって手を合わせたに違いない、と思う。

もちろん Ladyhawke [ Paris is Burning ] はパリ郊外の暴動を歌ったものではまったくないのだが、この曲のヒットがヨーロッパ大陸に広がるにつけ、唄のタイトルを聞いたパリの人々は皆こぞって「えええっ?!オラのクルマ燃やさないでくださいまし、なんまんだぶなんまんだぶ・・」と手をすりあわせたに違いないというのがオレの立てた仮説である。

ま、そんなことを確かめようと彼女のパリ公演を観にでかけたのであった。場所はくしくもオレにとって Friendly Fires が彼らの出世作 [Paris]  を演奏するのを初めてパリで観たのと同じ Nouveau Casino というべニューであった。ここは彼女もお気に入りのライブハウスらしく、「新進のクリエイターたちが集まるカルチェ」というあからさまに怪しい形容詞がついてから久しいオベルカンフというエリアの中心に位置する。おそらくこれまでの人生、基本的には羊に囲まれて暮らしてきた彼女が初めて訪れたパリのおしゃれエリアで舞い上がってしまった様子があますところなく、しかも正直に書き上げられたのがこの [ Paris is Burning ] という名曲なのである。

実際の彼女はアスペルガー症候群(知的障害のない自閉症の一種)という診断をされているそうなのであまり変な言い方もできないのだが、オレは彼女が「オタク道」を追求する姿をポジティブに評価したい。仮に心の病だとしても、その「偏執」性がミュージシャンとしての良い結果に結びついているのだと思うし、観客とのコミュニケーションは彼女自身にとっても癒しになるのではないか。想像どおり派手さはまったくないステージだったが、彼女が「ワッカワッカ」ならすギターリフや男性っぽい唄い方の表情など、高得点を差し上げたいと思った。

もちろん Ladyhawke の真骨頂はその曲の良さにあるので、CDで聞くだけでも十分というミュージシャンに分類されてしまう恐れもあるのだが、一度ちかくで観ておいて良かった。ステージ最後の曲で[ Paris is Burning ] が演奏されると、パリの若者たちも大絶叫で大喜びだった。だがしかし、ここからちょっとばかり離れたエリアでは、今この瞬間もクルマを燃やしているマグレブの若者がいるかもしれない、と思うと、ちょっとだけ複雑な気がしないでもない。パリもいろいろなのだ。

Lh1

@ Nouveau Casino

彼女のセルフタイトル・アルバムはオレの愛聴盤だ。ゲイリー・ニューマンからキム・ワイルド、ヴァン・ヘイレンまで80年代サウンドの黄金期に影響を受けた音が懐かしくも今あたらしい。日本人には荻野目洋子か渋ガキ隊にしか聞こえない曲の宝庫でもあり、そのへんがグッとくるのであった。

● コメントありがとうございます。返信できないので追記します。

ににさん、イギリスにおかえりなさい。UKツアー、軒並みソールド・アウトみたいですね。KOKO前はダフ屋が出ないことも多く、ちょっとだけ心配です。出てたら出てたで少し怖いヒトが多いのは、日本もイギリスもおんなじですが。

そういえば大昔、東京でブライアン・フェリーのコンサートに出かけたのですが、道すがらダフ屋のジイサンが近寄ってきました。「さあお兄さん、ブライアン要らないかい?ブライアンあるよ~。」 ブライアン・・・・・誰のことか、まったく分かってないよね、じいさん・・・。 間違ってはいないけど、かなり脱力したまま開演をむかえました。

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コメント

こんにちは。久々にお邪魔します。
ただいまわたくし、ワーホリでイギリスに舞い戻ってきました。
5月のKOKOでのLadyhawke単独ライブ、行きたいのに売り切れなんですね~。会場前で「譲ってください」をやろうかと思ってます。
しかし彼女のアルバム最高ですね。ヘビロテ中です。Great Escape出ないの残念・・・

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