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2009年4月 7日 (火)

Towers of London

<2005. 08. 28 @ Radio One Stage, Reading Festival '05>

この週末だが、英国で故ジェイド・グッディ さん(享年27) の葬儀がしめやかな中にも盛大に執り行われた。彼女が癌と闘病中の様子を、そして「死」にいたるまでの間の「悪態」や「結婚式」といった一挙一動を、各TV局はこの数ヶ月間、あますところなくただただ放映し続けてきた。そして今回の葬式も、過去そうであったとおり、テレビはその模様をライブで延々と流し続けたのである。

このジェイドさんのことは日本でも一部ニュースで取り上げられたりしており、ご存知の方もいるだろう。彼女自身は教養やつつしみをまったく持ち合わせていない、外見的器量のかなり劣った、そもそもはいわゆる社会的底辺にいたであろう一般の民間人であった。ちなみに父母ともジャンキーで、とくにおやじの方はそれが原因で他界している。

そんな彼女が「リアリティTVスター」として一躍脚光を浴びたのは、2002年の『Big Brother』という、有名な「リアリティ・テレビ」番組での破天荒な言動によるものだ。オレも当時これを毎日TVで見ており、「とんでもないヤツだ!」と義憤に駆られながらもけっこう楽しんでいたことを覚えている。以降の彼女は、なにか特技があるわけではないが、「職業セレブ」としていわゆる「セレブリティ」の仲間入りを果たしたのであった。それ以来今日に至るまで、彼女のことが英国の女性週刊誌をにぎわせなかった日はない、と言ってよいだろう。

オレもそんな彼女を追いかけていたわけではないのだが、月日は流れて 2007年、今度はジェイドさん自身が「セレブリティ」の一人として、『Big Brother』の裏版ともいえる『セレブリティ Big Brother』に出演したときは強烈だった。競演(ハウスメイト)のインド人有名女優に対して「人種差別主義」的表現で侮辱したとして、全国民から強烈なバッシングを受けてしまったのである。それどころか、社会的にTVの倫理規定が根源から大問題になったり、首相が出てきて遺憾の意を表明したり、とにかく大騒ぎになってしまったのであった。

落ち着いて考えれば、彼女は「人種差別主義者」というよりは、ただの教養の無い「バカもの」のひとりだ。ただ、「人種差別主義者」を非難しなければいけない=自分は「人種差別主義者」でない、という踏み絵を踏まされそうになった英国社会全体が我を忘れて狂乱の渦に突入してしまった、というのが冷静な分析だと思う。「フェアプレイ」という概念同様、この「人種差別主義者」というモノの見方は英国人の2大弱点で、「オマエはフェアじゃない」あるいは、「君は人種差別主義者だ!」といわれたら、そいつは社会的に生きていけなくなってしまうのだ。

ところで、だいたいオレを含めた日本人の大半がそうであるように、おおかたの英国人は「人種差別的」側面を持っていると思う。そう言うと怒られるかもしれないが、良いとか悪いとかのはなしではなく、ヒトは皆自分と違うものを区別したり差別したり、ということはあっても不思議ではない、とは言ってもいいだろう。

たとえば日本では、「俺の娘は有色人種のガイジンには嫁にやらん」的な発言は、表向きにはともかく、身内の会話の中では一定の理解をもって受け入れられたりするケースがあるのではないか。英国ではそんなあからさまな発言をする人はさすがに少ないが、おおくは自分が気が付かないうちに「人種差別をしている」という連中だ。「差別」とは「された方」がどう感じるか、という問題なので、最終的ジャッジを自分ではできない。だから自分が人種差別主義者でないことを証明するために、「人種差別主義者」のレッテルを他人に貼って安心する。とまあ、そんなところだと思う。英国人の弱点を見事についてしまった事件だった。ジェイドさんに「人種差別的扱い」を受けたことになっている例のインド人女優も、ジェイドさんの悪態には腹に据えかねるものがあっただろうが、別段「人種差別とは思わなかった」という。

ジェイドさんの一件は、そういった「見たくない」現実を見せ付けられ、弱点をむみりやり突かれてしまった社会の狼狽だった、といえるのではないか。彼女の無邪気と無教養がそれを表ざたにしてしまった、という意味ではこの『セレブリティ Big Brother』はたいへん意義深い番組だったと思う。思えば彼女の存在意義はそこにあったような気もする。この「人種差別」の顛末にかぎらず、なんとなく表ざたにしてはいけないということになっているモノゴトについて、ヒトは怖いもの見たさで毎日週刊誌を開いては、彼女の記事を追いかけていたのかもしれない。

まるで王室級(にオレには見えた)の壮大な葬式。これも含めてリアリティTVに人生をささげつくしたジェイドさんの「覗かれ人生」の集大成である、と結論づけるのは容易だ。ただ、オレには葬儀に参加していたヒトも、TVで中継をず~っと見ていただけのヒトも、英国人は皆、彼女の死に冥福を祈りつつも、「過去騒ぎすぎちゃった自分」をあらためて総括しながら、、それらの過去の出来事を封印する作業をしていたのではないか、と思えてならない。

とまあ以上が能書きですが、オレは「Big Brother」も「セレブリティ Big Brother」も一所懸命見ていたが、英国人ではないので、彼女の葬儀をTVで横目で見ながら「過去の自分を封印」する作業をしていたわけではない。オレが画面の中に探したのは、「Big Brother ハウス」の元同居メンバー達が葬儀に来ていたかどうかという、もっと三面記事的な内容である。特に気になったのは Towers Of London のボーカル、Donny の存在だ。www.myspace.com/towersoflondon, もっとも、冷静に考えればヤツが来る理由も、お互いの間の面識と呼べる面識も実際のところ、無い。彼は例の「人種差別」問題の勃発した年の『セレブリティ Big Brother』にジェイドさんと同じくハウスメイトとしてともにエントリーしたものの、視聴者の投票を待たずして、最初の週に壁をよじ登ってハウスから「脱走」してしまった無法者である。

このあからさまにイロモノ風のバンドは登場時点からNMEでそれこそイロモノ扱いであったことを思い出す。だがシングル曲が何曲かそれなりにチャートを賑やかし、2005年のレディング・フェスティバルでは新人ながら大テント(Radio One Stage)での登場、となった。見晴らしが良い(観客が少ない)ので、会場では寝そべりながら余裕の鑑賞ができた。ひねりのないパンク・チューンはどうにもならないものではあるが、その格好・立ち振る舞いは縁起物として楽しませていただいた。

この日そのあと彼らは、以前 The Rakes のレポートで書いたとおり、ボーカリスト不在の The Rakes のサポートをするためにステージに上がってきたわけだが、その他のサポート陣(Bloc Party、Maximo Park)らが、本当の意味での『友情出演』であったのに対して、Donny その他の Towers of London 組は、一目見てわかる、「ただ単に出てきたヒトタチ」であった。

ただ The Rakes はまだ良かった。レディングの少し前、同じ年の Download Festival では、Donny は楽屋で他の出演バンドの連中にいちゃもんをつけて殴りかかり、警察沙汰になっているのであった。このあたり、『セレブリティ Big Brother』でたった48時間だけ滞在・出演したリアリティ・TVで行なったいくつもの傍若無人な態度に通じるものがある。ま、そんなわけで、オレはバカバンド感のある Donny を見ることはできたが、チンピラっぽい Donny らしい Donny を見ることはできなかったのである。

そんな無思慮・無鉄砲の Danny がジェイドさんの葬儀にもしも来ていたら、それはそれで興ざめになってしまうのだが、彼が「ハウス」を脱走せずに『セレブリティ Big Brother』に残っていたらどうなっただろうか、と考えた。英国人はもっと見たくないものを見る羽目になっただろうか?いや、入居後瞬時にしてハウス一の嫌われ者になったこの男は、一番最初にハウスメイトから「追放」の投票を受けたに違いない。彼が英国人のこころに突き刺さるような「暴言」をはく機会は、いずれにしてもなかったのだと思う。

Tol

このシングルCDをジャケ買いしたが、いまだ未開封で聴いていない。

ところで、セレブリティとはイコール「有名人」のことで、ヒトにカオを知られていれば、ジェイドさんでもこの Donny でもセレブである。日本の週刊誌で見た『杉田かおる セレブ婚』って何だ?杉田かおるはセレブではないのか?というかセレブでない芸能人とは?

ジェイドさんは最期に有能PRマンを雇い、TVに更に露出しまくり、巨額のお金を2人の遺児に残し、「セレブ」から「お金持ち」に出世されて天に召されていきました。

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