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2009年11月

2009年11月13日 (金)

Black Lips その2

< 2009. 11. 06 @ Le Cigal, Paris (Festival Les Inrocks '09) >

ライブ会場においてクラウド・サーフが禁止対象となりやすいのは、いうまでもなくそれが危険行為だからだ。万が一けが人でも出た場合、それは会場や主催者の責任問題にもなりかねないので、あらかじめ「禁止」と銘打たれるわけである。とはいえ、無軌道な若者の中にはクラウドサーフをやるためだけにライブに駆けつけてくる輩もおり、またショー自体の盛り上がり具合のバロメーターにもなるわけだから、当然ライブ会場においては「なくてはならない」縁起物として、その存在意義は低くない。

クラウドサーフの危険を最小限に抑え、ライブの進行をできるだけ妨げないようににするために、一定以上の規模のライブ会場ではステージと観客のあいだにスペースを設けて、屈強なセキュリティ・ガードを配置することになる。ゆらゆらとステージに向かって流れてきた「サーファー」をセキュリティが手前に引っぱり下ろし、首根っこをつかんでステージ脇に連れ去る。体力と根気のいるたいへんな作業だが、これによってクラウドサーフィンに起因する事故を水際で防ぎ、ショー自体が台無しにならないようにしよいという、会場・主催者の配慮だ。

こうした配慮がない、と想像してみるとどうだろう。もちろん事故の可能性も高まるわけだが、理論的に考えてみると、それに加えて「サーファーが前へ」→「サーファーがステージに到着」→「ステージにサーファーがどんどんたまる」という流れが想像できないだろうか。だいたい世のクラウドサーファーというものは、リフトアップされた時点でほとんどの場合ですでに薬物によってたいへん高揚感を得ており、従ってステージ到着後、そこから降りるという選択肢がなかなか頭に浮かんでこないものだと思うからである。

ステージでは当然バンドが演奏中なわけだから、そこに観客がたまってしまうとさらにいろいろな不測の事態が想定される。だから現実にはそういったことに陥らないための「スペース」なり「セキュリティ」といった装置がどうしても必用になってくるのである。で、なぜこんなことを書いたかというは、オレの住むこのパリではこういった常識が通用しないことをあらためて痛感したからである。

久しぶりに観た Black Lips だが、ご存知のとおりジョージアの不良共だ。毎年11月になるとパリをはじめとしたフランスの複数の都市でそれぞれ5日間ほど開催される Festival les Inrocks なるインディ系のイベントに参加してたのだ。全部で30以上の出演バンドは、そのほとんどがアメリカかUKからの招聘となる。当然それなりの規模を持った会場で開催され、観客はほぼ満員だ。普通のバンドであってもそのセキュリティには万全がのぞまれるところ、この荒くれバンドを目の前にして興奮状態かつ完全にキマリまくった観客達に対し、この日の会場には、ステージ前の「スペース」もなければ「セキュリティ・ガード」の姿もまったく存在しない。これこそが、「会場整理」などといった野暮を拒む、芸術の都パリの真骨頂であると驚嘆せざるを得ない。

その結果、こうして始まった彼らのステージは・・・

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しだいに漂着したクラウドサーファーたちが「たまり」はじめ、そしてそれにつられた酩酊者たちがどしどしとステージによじのぼりはじめ、このように↓

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バンドの方々が見えません。というか、誰もステージを降りない。それはなぜかというと、それを整理する係員がいないからだ。

波打ち際に打ち上げられた漂流物は、他のゴミともあわさって砂浜に淀み続けることが確認できた夜であった。

というように、何の余韻も教訓もないままレポートを終えようと思ったが、このあと面白い光景があったことを思い出した。さすがにバンドの演奏ができなくなってしまったこともあり、漂流物が自主的に撤収をはじめたころ、思い出したかのように、1人~2人の主催者側のオジさんたちが舞台ソデからでてきてた。観客をステージからおろすように見えなくもない仕草をはじめるにははじめたのだが、段取りも良くなく、効果もない。打ち上げられたサーファーやよじ登り組はつぎつぎとやってくる。ついにはステージ上で観客にむかって尻を丸出しにする者、あるいはバンドメンバーの顔をべろべろなめる連中が続々とでてくるにいたって、数の上では圧倒的に分のわるいおじさんたちが、逆襲にでた。

悪質な連中にターゲットをしぼって、ステージ滞留組の観客を後ろからつきとばして、人の海の中に返してあげるのである。考えてもみてほしい。薬物が決まりすぎてわけのわからなくなった観客がステージ上でこちらを見ながら両手を挙げて雄たけびを上げている。それをおじさんが後ろからとび蹴りで観客の中に突き落とすのである。蹴られてから観客の渦に頭から飲み込まれて消えていくまで、その間0.5秒。そのような光景が次から次に繰り返されるのである。

そもそも事故がおこらないように会場と観客をコントロールするのがセキュリティの役割ではなかったかと思うのだが、この国のコンサート会場では最初からセキュリティの概念が存在しないため、芸術作品(ライブステージ)をできるだけ見やすくしよう、と個々の係員が個性あるその場しのぎの対策を講じるのであった。

バンドのステージに取り立てて感想はなかったが、良いものを見せてもらった充実感のあるライブであった。

Black Lips は、以前観たときも思ったのだが、ステージ上でギタリストが必ずゲロをはく例のあれは、是非やめてもらいたい。サーファーたちが浜辺で汚れたまま、海に帰ってきてほしくないものだ。)

2009年11月 5日 (木)

James Yuill

<2009. 04. 25 @ Electric Ballroom, London (Camden Crawl '09)>

いささか旧聞に属するものであるが、例の「のりピー」事件で人々が最も衝撃を受けた映像は、酒井のり子氏がクラブのDJスペースで、ヘッドホンを耳に当てながらテクノ系の曲をガシガシとかけまくっていた、あの光景ではなかっただろうか。

なぜアレがびっくり映像だったかといえば、それはいうまでもなく世間一般の持つ酒井氏のイメージと、「テクノDJ」との落差をアタマのなかで瞬時に埋めることができなかったからに違いない。少なくとも、オレはそうだった。職業としての「清純派アイドル」は、暗黙のうちに突飛なことの許されないイメージ上の制約があり、それは突飛ではない世間の大多数を占める一般大衆の期待の上に成り立っているのである。まあ、あんなフツーの(かわいらしい、という意味で)顔してテクノDJはねえべ、ということだ。

一方、フツーの顔してるのに(まっとうな人に見えるのに)、何をやっても許されてしまうのはいわゆる「オタク」の世界の方々だ、と常々考えている。

この「ライブ道」ではオタク系ミュージシャンに対しては基本的にサポーターの立場を取っていることは、これまでも繰り返し述べてきたことである。オレはオタク感のある連中のライブを観るのが好きなのだ。自分の考えるヲタ系とは、ロッカーっぽくない見た目、それでいてある種現代のロックの本質を突くような新しい音楽をかなり粘着質なライブパフォーマンスで披露してくれるヤツらのことだと定義したい。

オレのココロの中で永遠の「オタク」ミュージシャン・ヒーローは Tom Vek だが、2005年に一度ライブを観たきりで、その後まったく消息不明になってしまった。ヤツの場合は見た目も本当に「オタク」そのものであったが、ライブバンド4名中ツインベースという構成はオタク魂を見せつけられた思いで、すっかり参ってしまった。いま何やってんのかなあ。

もちろん、オレの中では Lady HawkeFriendly Fires などもライブを観た結果、マイ「オタク」ミュージシャンの範疇にに入れているのでその範囲自体は決して狭くないのだが、Tom Vek 以来となる「本命」を探していたのもまた事実だ。そんな折、見た目がイキナリ「ヲタ」感全開の物件を発見したので、ことしの春先、Camden Crawl ('09) で様子を探ることにした。フォークとエレクトロニカのミックス音楽をやっている、James Yuill 氏のことである。www.myspace.com/jamesyuill Camden Crawl は2日間の期間、両日出演。初日は満員で会場に入れず姿を拝めなかった。すでになかなかの人気があるようだ。

MySpace の音源や、先ごろ発売されたアルバムを聴くと、比較的フォーク色が強く出ている感じがするのだが、実際にそのパフォーマンスを見た彼のステージを一言でいいあらわすとすると「のりピーのテクノDJ」のようなものだといえるだろう。音のたとえとしてはちょっと違うけど。もちろん、両者とも見た目が善良な市民であるにもかかわらず、のりピーには違和感があって、James Yuill だとしっくりくるのは、彼からかもし出される「オタク」感のせいである。いずれにしろフォークミュージシャンのオタクがエレクトロ系DJをやっている、という印象が彼のライブの醍醐味だ。アルバムと違って、打ち込みダンスのパートが多い。フォークギターを背中にしょってDJをやってるようなものなのである。

Tom Vek の「意表をつくバンド構成」とは違って、全て一人でおこなうDIYが James Yuill のスタイルだが、それゆえの「あたふた」感も含めてなかなか期待の持てるよいオタク・ミュージシャンに出会えた夜だった。

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@ Electric Ballroom

たぶん彼もいろいろなクラブでDJをやっているだろうと思うのだが、DJとしてはいわゆる薬物感のあまりしない稀有な存在といえよう。

今月はアルバムも日本発売となり、12月には来日公演を行なうようだ。James Yuill のアルバムをリリースする「もしもしレコード」は、その音楽ではなく彼がステージでダンスする姿を観て契約を決めたという。オタクの「キラー」ダンス姿を是非堪能してください。

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