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2010年1月16日 (土)

Male Bonding

< 2009. 10. 02 @ Barfly, Camden, London >

サシャ・バロン・コーエン主演の怪作『ボラット』は、なかなか好みが分かれるところだろうが、オレは大好きな映画だ。

彼の新作となる映画『BRUNO』を去年の夏ロンドンで観たのだが、コイツはオレの予想をはるかに上回る衝撃的な作品であった。『ボラット』同様、英米共に上映当時は興行収入が1位だったということで、先ごろDVDが発売されたのでこれもまたさっそく購入し、今は繰り返し家で鑑賞しているのだが、まあはっきりいってとんでもないチ○コ映画です。まだ日本では上映前かもしれないので、ストーリーには触れないが、オレが気になったのはそのエンディング・シーンだ。

ハリウッドのセレブリティになると言いはり、各地で騒動を起こすゲイのオーストリア人BRUNOが主人公のこの映画。彼は「有名になるためにはどうしたらいいか」をアメリカでコンサルタントに相談する。そしてそのための方策として、いわゆる「チャリティ」の世界に足を踏み入れることになるのである。首尾よく成功したという設定なのだろうか、映画のエンディング・シーンでは[ Dove of Peace ] (平和の鳩)なる曲を彼が歌ってお開きとなるのだが、このシーンの共演者がスゴイ。スティングやボノなどといった、アフリカやらアマゾンやらで大立ち回りをするような、それこそ「チャリティ」界のうっとうしい大物と肩を並べながら録音スタジオの中で熱唱するのだが、その曲の歌詞の内容がとてもステキなのであった。

♪途上国には、きれいな水と食料、そして教育を。それがわたしの夢。全ての村々に肛門洗浄場を!

♪韓国・北朝鮮の戦いをやめさせよう!キミたちどちらも基本は中国人だし。

こんな歌詞の歌をボノやスティング、そしてエルトン・ジョン卿やスラッシュが共に演奏し、歌うのである。あほですか。

サシャ・コーエンの狙いとしては、チャリティ自体を、そしてチャリティにのめりこんでいる「大物」ミュージシャンたちそのものをバカにしているのは明白である。『ボラット』にせよ『BRUNO』にせよ、彼の正体を知らない素人相手に人間の本性をあばいてしまうという恐ろしさが彼の映画の身上なのだが、このシーンが特に問題なのは、いまや本当のセレブリティとなったサシャ・コーエン相手にのこのこと出てきてしまって、アホな歌をうたっているこれらの御大ミュージシャンのまぬけさに衝撃を受けるからである。彼らは「BRUNO」にだまされてアホなことにつき合わされているのではなく、「サシャ・コーエン」と知った上でアホに成り下がってしまっているのである。当人達は「しゃれのわかる自分達」ということかもしれないが、オレに見えるものは、かつて輝いていたミュージシャンたちの悲しいなれの果て方だけといえよう。

このことから得られる教訓は、「あがってしまったミュージシャンは、余生をやはりチャリティとかの世俗を超えたことに費やすべきであって、余暇で音楽をやってしまってはいけない」ということではないだろうか。そんなことを思い知らされた名作映画であったといえるだろう。

さて。それでは逆に、ではこれから売り出そうとがんばっているミュージシャン達は、音楽活動以外の余暇などに何をするべきか、というのが今日のオレの問いである。それは、じつはやはり音楽活動であるべきだ、というのがオレの答えというか希望であって、自分としてはそういうヒトタチを応援したい、というのが本日のつぶやきである。

The Big Pink の準メンバー(?)としてアメリカツアーまでこなしてきた本邦の誇る東ロンドンの精鋭 Akiko氏は、自身の主催するバンド Comanechi 初のアルバム発売日も The Big Pink の中核として遠い異国でツアー中だったという。自らのバンドのローンチ記念ライブも物理的に満足におこなえない環境でありながら各種音楽活動に没頭するさまは、若者ならではのひたむきで美しい姿といえるだろう。やはり新人の皆さんは「音楽バカ」に見えてなんぼ、だよなあ。「バカ音楽」をサシャ・コーエンに歌わされて喜んでいる連中をみると、さすが「ゆりかごから墓場まで」の国イギリス、と感慨深いものがある(意味不明)。

いずれにしても彼女のこの新作アルバムは NME はじめプレスからもかなり好評のようで、オレとしてもかなりささやかながら応援をしてきた甲斐がある、というものだ。

「ささやか」といっても、いつものように無料ライブに参加した、というセコイ話だけではないぞ。ミュージシャンにとっては収益性が決して悪くないのではないか、とオレはなんとなく推察している彼らのバンドTシャツを購入したのみならず、コノヒトが Comanechi 以外にもフロントをつとめている Pre というノイズ系のバンドのCDを、ロンドンのオックスフォード・ストリートにあるHMV で、いまどきまさかの£15 (約2,000円)も出して入手したりしているのである。もしかしたら、 The Big Pink をブログで取り上げたときに説教くさいことを書いたので、呪われてしまってはいけないと、お祓(はら)いの意味でこのCDを買ったような記憶もあるが、まあ、結果的に応援ということにはかわりないだろう。やはり「バンド活動」以外の時間も「バンド活動」している皆さん、音楽バカの連中にはがんばっていってほしい。『BRUNO』のエンディングを見るたび、最近そう思うのである。

さて、そんなわけで長い能書きでしたが、さすがの Akiko氏も The Big Pink やら Comanechi やらで忙しいさなか、 Pre の活動まではなかなか手が回りきらないのではないか、と思う。では彼女のいない Pre のメンバーはどうしているのか。実は、やはりバンド活動をしているのであった。このあいだカムデンの Barfly で姿をとらえた Male Bonding というバンドがその Pre マイナス Akiko氏という構成のノイズ系パンクバンドである。www.myspace.com/malebonding この、かなり「男同士」感の漂うバンド名自体がその出自をあらわしているといえなくもないが、やはり「音楽バカ」の新人たちは、フロントマンがいないからといってバンド活動を休むわけにもいかない。このひたむきなバカどもを応援するために足を運んだのであった。

さて、演奏を楽しもうとビールをちびちびやりながら壁にもたれて鑑賞していたのだが、この日の Barfly は薬物摂取が過ぎてすこしおかしくなってしまった観客がステージ前で大騒ぎをするという波乱の幕開けであった。オープニングアクトの女性バンドが演奏中、メンバーに抱きつき、顔をなめる。つづく別な前座バンドのフロントマンは、演奏中にそのキマリくんにズボンを下ろされ、生しりが丸見えになる。同様にキマってしまっている女性観客を高く持ち上げ、そして脳天から床に落とそうとする(このときは、別の観客によるとっさの救出により、オレはコンクリの床で人間の頭がかち割れれる瞬間というものを見る体験をせずにすんだ)。そしていよいよMale Bonding の登場だ。オレは応援する「音楽バカ」のこの連中のステージが、薬物摂取者の傍若無人なふるまいにより台無しになってしまうのではないかと気が気ではなかったのである。

だがそんなことは杞憂であった。というかむしろ、オレは逆の心配をすべきであった。果たして演奏が始まるや、ほぼ全員暴徒のように熱狂する観客が、このキマリ君の存在を消し飛ばしてしまったのである。観客全体、いやステージのメンバーまで含めてわやくちゃである。一曲目からオレは荒波にもまれる小船(に乗る子リス)のように翻弄され、ほうほうの体でバーカウンターまで後退。「オレにはちょっと、無理があった・・・」と、か細くつぶやきながら呼吸をととのえると、数曲後には下界へ脱出していたのである。あたまカチ割られなくてよかたのはオレだよ。まったく。

翌日イーストのCDショップで彼らの7インチ盤を買いながら、やはり歳も歳なので、こういった穏便な応援だけにしておけばよかったなァ、と少し反省。そしてパリへの帰り道、ところで、これは「音楽バカ」ではなくて、こいつらこそ「バカ音楽」と呼ぶべきなのかなあ、などといった考えが頭をよぎったりしたのであった。これも意味なしだけど。

Img_4228_1

@Barfly

皆、あばれてます。

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