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2010年6月

2010年6月13日 (日)

The Lotus Eaters

< 2010. 06. 11 @ Barfly, Camden, London >

わたくしこと funga77 はこの道一筋34年ほどになる年配の者である。

「この道」の一環に含まれるであろう「ライブ道」求道(入門11年目)についてはそれが何を指すのか過去に何回がこのブログでも触れてきたが、「この道」自体、すなわちひたすら英国音楽市場の最新動向をフォローし続ける、という行為は、たとえそれが自分自身の一番の趣味であったとしても、よく今まで続いているなァと、すくなからず感慨深いものがある。

まず一番最初にフォローしたバンドは Dr Feelgood であった(東芝EMI当時のファンクラブにも入会済。会員は全国で20名ほどでした)。時代は1975-6年のいわゆる「PUNK前夜」だ。最近で言えば、さきごろライブを見た Chapel Club とか Darwin Deez など、とりあえず話題なので観にいったという新人さんになるのだろう(バンドの国籍に関わらず、英国マーケットでの活躍をめざす方々、もしくは英国マーケットで注目をあつめるヒトタチ)。

まあなんにしても、たゆまず「新しい音」を長年ミーハーに追い続けてきたところがミソである。本当の最先端の音に詳しい方から見れば、かなりぬるいことをやっていることは否定できないし、音楽情報の生き字引みたいな方からすれば、オレの方は素人の域を出ないことは十分心得ている。だけど、この30有余年という単位で、言ってみればインディやオルタナティブ系と一般に称される分野を一貫して飽きることなく続けて追いかけてきたことは、我ながらではあるがゴクローさまでした。ホント。

とはいえこの長い年月の間には「危機」もあって、ようするに「飽き」かけたこともあるのを思い出す。

特に「この道」に入門した高校生時代には、ちょうどPUNKの発生からニューウェーブへの発展期があって、驚くべき新しい音楽が次から次へと出てくるものだから純粋にどっぷりのめりこんでしまったので、かなりマニア化した領域まで一気に突進したのである。その反動、とでも言ったらよいだろうか、1982-3年頃になると新しい領域の音楽が増えてきすぎたためになかなか追いかけられなくなってしまった。ちょっと疲れてしまったのだ。どうもこのころになると、自分の好きな音楽であるか否かを問わず、新しいものすべてを追いかけなければいけない、という脅迫観念に近いものにとりつかれていたようである。

で半年くらいのあいだ、あまり新しい音楽を聴かない期間というものができてしまった。そうするとまた新しい情報から遠ざかってしまうので、なんとなくなし崩し的に音楽趣味に対して距離ができてしまったのである。ここでずるずると行ってしまって今日に至れば、オレは70年代のPUNKにだけやたら詳しい、「昔の音楽はよかったよ~。今の音楽はみんなかつてのパクリでカスみたいなもんだなー。」と威勢はいいが周りの若い方々からはからはまったく尊敬されないおやっさんになっていたことだろう。(注:今のオレが若者から尊敬されているわけではまったくないが、もののたとえとして)

この「危機」を救ってくれたバンドが The Lotus Eaters である。www.myspace.com/thelotuseatersuk 偶然近所の貸しレコード店で見かけたのだが(この頃になると、レコードも買わずに貸しレコード店にあるような「ぬるい」モノだけしか聴かなくなっていた)、この店にしてはちょっとばかり気合の入った品揃えという感じがしてさっそく借りてみたのである。

結果は捨て曲なしの大当たりで、久々に「この道」を目覚めなおすきっかけとなりました。こういういいバンドが、今の世の中には他にもいっぱいあるかもしれないのである。自分から積極的にどんどん探しに行かなければいけない。そう決意を新たにし、「この道」に再入門、以来小さな紆余曲折はあったものの基本的には一貫して一修行僧の立場をつらぬいてきた。 The Lotus Eaters は、オレが信仰を誤りそうになた時に助けの手を差し伸べてくれた「師」とも呼ぶべき人たちである。まさに「蓮(はす)」の上に乗っていそうなカンジではないか。

解散以降地味なソロ活動があったものの基本的にはヒトマエにあまり出てこなくなった彼ら。まあ、お呼びもかからなかったのだろう(オレは輸入版ソロ活動12インチシングルとか買い集めていたが、コレはつまらんかった。)。最後にロンドンで演奏してからもう10年もたつという。そんな彼らが何を思ったのか新アルバムを出すらしい、と聞いた。それに合わせたのかカムデンの Barfly で演奏すると言うものだから、オレは早速チケットを購入し、昔のお礼を言いに出かけたのであった。

ピーターもジェレミーもすっかりパブでサッカー観戦の似合うオヤジさんに成り果てていたが、観客は見かけが輪をかけた切なさのオジとオバである(含むオレ)。かれらの代表曲をすべて網羅したアコースティックのセットは、なかなか感動的なものであったし、会場の定員の半分にも満たない観客ではあったが、その声援の大きさとやさしさは普段の Barfly で経験するものよりは格段上のものであった。

途中ピーターが「新しいアルバム作ってはあるんだけど、発売できるかどうかな~。」と言うのを聞き、オレは即座に「とにかく買わせていただきます」と、いまや即身仏のような髪形になってしまっている彼にむかって心の中で手を合わせたのであった。

Tle

@ Barfly

ちなみにオレが MySpace をはじめたとき、真っ先にフレンズ・リクエストを申し込んだのは彼らThe Lotus Eaters 師に対してである。当時の彼らの近況を知りたかったからだ。それから数年かかってしまったが、今回ついに会うことができてとてもよかった。

ところで彼らの演奏が始まる前、会場では Dr Feelgood のアルバムがずっと流されていたが、個人的にはとても因縁深いものを感じたしだいである。初心を忘れず「この道」を突き進め、というお告げのように聞こえたのであった。

●コメントバックできないので、追記します。

コメントありがとうございます。そうなんですよねぇ、ツアーらしきものもおこなう予定のようです。正直言うと、こうして目にすることのできるバンドだとは思っていませんでした。長生きはするものです。

2010年6月 6日 (日)

Pony Pony Run Run

< 2010. 05. 14 @ The Freebutt, Brighton (Great Escape '10) >

英国に居を構えていたときのハナシだが、電気・ガスなどの公共サービス、あるは銀行などの「お客様相談室」に電話をするときは、けっこう身構えたものである。だいたいそういったサービスは北イングランドとかスコットランドにオペレーションセンターがあって、電話を受け取る係りのヒトは強烈な土着訛りの英語をはなす。表情を見ながらだとまだなんとかなるものの、電話だといったい何を言っているのかまったく分からないことがあったりするものだ。

もっとも強烈なのは回線がインドに回されてしまうときで、会社としてはその方が賃金も安くて効率的なのかもしれないが、客であるオレはハッキリいって困る。とりあえず分かりやすい話し方をしてくれるオペレーターもいないではないが、まったく容赦ないインド英語を繰り出されると手の施しようがない、すなわち会話が一歩も前に進まなくなってしまうことがあるのである。「なんですって?もう一度言ってくださいますか?」「ええ。ですからविकिपीडिया(英語を話してるはず)を教えてください。」「えっ?なっ、なんと言いましたか?」「विकिपीडियाです。分からなければज्ञानकोशातूनでもかまいませんよ。」「なっ、な・・・・・・・・。」

先方は何が問題なのかまったくわからないので、ハナシがかみ合わない。そこでオレは逆ギレしたふりをしながら、「キミの説明は要点をえないので、はなしにならん!日を改めて電話かけなおす!」と言って受話器を置き、0.5秒後にはもう一度同じ電話番号にトライしてみるのである。なんとかすこしでもわかりやすい英語を話すインド人にでくわさないか、という淡い期待を抱きながらの卑屈な作戦はあるが、英国で穏やかに暮らすための生活の知恵でもある。

ところで、このインド人大作戦と並ぶほどの緊張を強いられた経験があるのは、ロンドンにおけるフレンチ・レストランであった。

まあ一般的に言ってフランス人の話す英語は分かりやすい。第一母国語でもなければインド人のように公用語でももちろんないので、そもそも難しい単語を使ってこない。オレの所属していた会社に籍を置くフランス人はみな英語が達者だが、多少の訛りがあっても理解できなかったことはほとんどない。せいぜい向こうの英文法がめちゃくちゃな場合に首をかしげたくらいで、それでも先方が一生懸命オレに対して意図を伝えようとしているわけなので、最後には分かり合えるのだ。

オレのいう「フレンチ・レストラン」とはロンドンの中心部セントジェームス近辺に軒を連ねる高級店で、まあハッキリ言って接待でもなければあまり縁のないところだ。UKの場合レストランはミシュラン評の☆のみが評価の基準になるわけではない。味よりは、「いかに高いか」「いかにおしゃれな雰囲気をかもし出すか」「いかにクリエイティブか」がポイントになっていて、少なからずの場合、味のほうはどうでもいいことになっている。そしてだいたいセレブリティ関係者はそういったところに登場するものなのである。

したがって、ロンドンでも伝統的な高級フレンチ店はともかく、こういった「セレブ」系高級店に入ってしまった場合、店員のフランス人から強烈な洗礼を受けることとなってしまう。金融危機のしばらく前、ロンドンがバブルの真っ只中だったころ、オレも接待要員として何度かこういったお店ののれんをくぐったが、なんと彼らはすべてフランス語で話しかけてくるのである!しまった、こういう店に来るには「フランス語」という文化教養がなければいけないのか!と自らの知的レベルの低さを嘆いたわけであるが、よく見るとフランス語が一ミリもできないはずのオレの同行者(英国人)がその店の給仕と談笑しているではないか!

そしてよくよく聞いていると、実は彼らは英語で会話をしているらしいのである。そうなのだ。そのフランス人給仕が話しているのは、文法的には100%正しい英語であって、発音は200%フランス語なのである。つまりこのお店のヒトタチは、本来英語が流暢で、発音も本来かなり本場感のある話し方ができるであろうにもかかわらず、あえてフランス語にしか聞こえないような発音の仕方で英語を話すことで、このお店の高級感、おしゃれ感をかもし出すことに腐心しているのであった。セレブを含む客の英国人は、この雰囲気をたのしむために、ハッキリ言って味的には「いかがなものいか」感の漂いまくるこのレストランに大枚をはたいているという仕組みなのである。しかがって、オレのような外人からすれば、インド人の英語が分からないのと同様に、このフランス人給仕の言っている英語の内容がまったくよくわからないという事態に陥ってしまうのであった。銀行の電話サービス窓口と違って、一方があからさまに分かりづらく話そうとしているわけだから、こちらは更に始末にわるい。

もっともこれは、おフランスに対する憧憬を隠し切れない英国人の弱点と言ってしまってもよいだろう。本来仲の悪い国同士で、お互い相手をバカにする悪口には事欠かないのだが、なんだかんだいって最終的にイギリス人はフランスに対する憧れの部分を隠しきれない宿命を持っているようだ。まあ、オレは単なる東洋の未開人なので、ミソもクソもイギリス人もフランス人も一緒だ。なんでもいいから分かりやすく話してくれよ、と純粋に思う。

さて、そういった英国人のフランスに対する憧れをあらためて思い出したのは、先日の Great Escape ('10) で最近売り出し中のフランス人バンド Pony Pony Run Run を観たときののことである。www.myspace.com/ponyponyrunrun

実は彼らのことは3年ほど前から良く知っていて、もちろんそんなに気になる連中ではなかったのだが、オレがパリに移ってから Fleche d'Or その他のライブハウスに英国バンドを観にいくと、かなりの確率で頻繁に前座をやっていたのを片目で眺めていたからだ。そんなに伸びてくる連中とも思えなかったが、昨年から今年にかけてシングル曲 [Hey You] (英語の歌)が地元フランスで大ブレーク。連日ラジオでヘビーローテーションの人気者となっていた。いまや Phoenix に続け!とばかりに盛り上がっているバンドに成長してきたのである。まあそんなわけでせっかく「地元」のよしみもあるし、バンドのショーケースイベントでどれくらい通用しているかを見るためと、ちょっとばかり応援してあげようとおもって彼らの出演する会場まで足を運んでみたのであった。

会場に入ってみると、まわりでちらほらフランス語の会話が聞こえてきた。そうか、英国在住のフランス人たちも観に来ているわけね、と思いかけたがどうも様子が変だ。「フランス語」が聞こえると言っても、「ぼんじゅーる」とか「とれびあーん」とか子供だましのような単語ばかりだ。もしやと思ったら、そういった会話や発言の源は英国人観客のようだ。そしてバンドメンバーがセッティングのためにステージで作業をし始めると、観客フロア奥のPAスタッフにいろいろフランス語で会話をしだしたぞ。それを観客の英人婦女子のみんさんは、そのフランス語をなぞるように復唱(のマネ)をしながらうっとり眺めているではないか!やはり本物のフランス語をはなすムッシューの威力おそるべし、といったところか。

そして演奏が始まり盛り上がりの中で [Hey You] が演奏されると、観客の皆さんは『♪Hey You!』のくだりで大合唱だ。もちろんいうまでもなく、「ヘイ・ユー」ではなくて「エイ・ユー」だけどな、全員。

「エイ・ユー」はフランスのラジオで聴いて十分知っていたわけだが、英国人にもバッチリアピールしましたな。このバンドがこの日のステージ上であからさまに聞こえるように使う仲間うちフランス語会話(彼らは皆若者なので英語は流暢)を聞いていると、ステージから観客に向かっては英語で話しながらも、英国人観客に「フランス語」が絶大なる効果を示すことを知り抜いているようだ。

イギリス人、とりあえずもてあそばれているような印象もないわけではないが、バンドなりの必死の戦略ともいえる。英国でも売れるといいね。いまやフランスではチケットがソールドアウトのバンドになってしまったので、ブライトンで気軽に見られたのは得したってことなんでしょうか?

Pprr

@ The Freebutt

ちなみに、フランスのラジオ局DJが彼らを紹介するときは、英語読みの「ポニーポニーランラン」ではなくて、「プニプニランラン」にしか聞こえません。日本におけるフランス語の弱点がもろに出た好例といえよう。

●ににさん、いつもコメントありがとうございます。

そうなんですよ、彼ら (We Are The Physics) ひさしぶりにロンドンで演奏するんですよね。実はその夜はThomas (Tom) White のチケットを買ってあって、テムズ川の南側に行く予定です。どうしても今彼を観たい、というものでもないのですが、ハッキリいうとこのブログネタのためです。さいきんライブ道もだいぶ動機がよこしまになってきましたが、「うわーつまんねーやっぱりフィジクスいっとけばよかったー」と後悔してしてしまうのも、ライブ道修行になるのではないかと瞑想中です。荒行すぎますが。

でも、彼らのライブぜひ楽しんできてください。観ていて楽しめるだけでなく、応援もしてあげたくなってしまう方々です。あとちょっとだけ真剣に行く末も心配しているので、万が一にも「負」のオーラを感じてしまうような事態があったら、ぜひ教えてください。

期せずしてライブ道初の「予告編」になり、失礼しました。

●ににさん、We Are The Physics いかがだったでしょうか?当方はTom氏の演奏を見終えて帰ってきたところです。まったく予想を超えた、驚くべきものだったので、慎重に筆を進めたいとかんがえております。

●ににさん、We Are The Physics 楽しんでもらえたようですね。なにより、彼らからネガティブな念波が発せられていなかったいうことで、本当にほっとしました。次回は応援に駆けつけたいものです。ところで、Tom氏はともかく、当日のメインアクトはわたしの苦手なザ・フラテリスのお兄さんがやってるサイドプロジェクトでした。まあ、トム・ホワイトだけ観にいったので、おまけだったのですが。まったく偶然ながら彼(ジョン・フラテリ)を椅子席の一番前で見る、という経験はロッキー・ホラー・ショーを観にいったあとのように、トラウマになりそうです。

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