« Silver Columns | トップページ | The Lotus Eaters »

2010年6月 6日 (日)

Pony Pony Run Run

< 2010. 05. 14 @ The Freebutt, Brighton (Great Escape '10) >

英国に居を構えていたときのハナシだが、電気・ガスなどの公共サービス、あるは銀行などの「お客様相談室」に電話をするときは、けっこう身構えたものである。だいたいそういったサービスは北イングランドとかスコットランドにオペレーションセンターがあって、電話を受け取る係りのヒトは強烈な土着訛りの英語をはなす。表情を見ながらだとまだなんとかなるものの、電話だといったい何を言っているのかまったく分からないことがあったりするものだ。

もっとも強烈なのは回線がインドに回されてしまうときで、会社としてはその方が賃金も安くて効率的なのかもしれないが、客であるオレはハッキリいって困る。とりあえず分かりやすい話し方をしてくれるオペレーターもいないではないが、まったく容赦ないインド英語を繰り出されると手の施しようがない、すなわち会話が一歩も前に進まなくなってしまうことがあるのである。「なんですって?もう一度言ってくださいますか?」「ええ。ですからविकिपीडिया(英語を話してるはず)を教えてください。」「えっ?なっ、なんと言いましたか?」「विकिपीडियाです。分からなければज्ञानकोशातूनでもかまいませんよ。」「なっ、な・・・・・・・・。」

先方は何が問題なのかまったくわからないので、ハナシがかみ合わない。そこでオレは逆ギレしたふりをしながら、「キミの説明は要点をえないので、はなしにならん!日を改めて電話かけなおす!」と言って受話器を置き、0.5秒後にはもう一度同じ電話番号にトライしてみるのである。なんとかすこしでもわかりやすい英語を話すインド人にでくわさないか、という淡い期待を抱きながらの卑屈な作戦はあるが、英国で穏やかに暮らすための生活の知恵でもある。

ところで、このインド人大作戦と並ぶほどの緊張を強いられた経験があるのは、ロンドンにおけるフレンチ・レストランであった。

まあ一般的に言ってフランス人の話す英語は分かりやすい。第一母国語でもなければインド人のように公用語でももちろんないので、そもそも難しい単語を使ってこない。オレの所属していた会社に籍を置くフランス人はみな英語が達者だが、多少の訛りがあっても理解できなかったことはほとんどない。せいぜい向こうの英文法がめちゃくちゃな場合に首をかしげたくらいで、それでも先方が一生懸命オレに対して意図を伝えようとしているわけなので、最後には分かり合えるのだ。

オレのいう「フレンチ・レストラン」とはロンドンの中心部セントジェームス近辺に軒を連ねる高級店で、まあハッキリ言って接待でもなければあまり縁のないところだ。UKの場合レストランはミシュラン評の☆のみが評価の基準になるわけではない。味よりは、「いかに高いか」「いかにおしゃれな雰囲気をかもし出すか」「いかにクリエイティブか」がポイントになっていて、少なからずの場合、味のほうはどうでもいいことになっている。そしてだいたいセレブリティ関係者はそういったところに登場するものなのである。

したがって、ロンドンでも伝統的な高級フレンチ店はともかく、こういった「セレブ」系高級店に入ってしまった場合、店員のフランス人から強烈な洗礼を受けることとなってしまう。金融危機のしばらく前、ロンドンがバブルの真っ只中だったころ、オレも接待要員として何度かこういったお店ののれんをくぐったが、なんと彼らはすべてフランス語で話しかけてくるのである!しまった、こういう店に来るには「フランス語」という文化教養がなければいけないのか!と自らの知的レベルの低さを嘆いたわけであるが、よく見るとフランス語が一ミリもできないはずのオレの同行者(英国人)がその店の給仕と談笑しているではないか!

そしてよくよく聞いていると、実は彼らは英語で会話をしているらしいのである。そうなのだ。そのフランス人給仕が話しているのは、文法的には100%正しい英語であって、発音は200%フランス語なのである。つまりこのお店のヒトタチは、本来英語が流暢で、発音も本来かなり本場感のある話し方ができるであろうにもかかわらず、あえてフランス語にしか聞こえないような発音の仕方で英語を話すことで、このお店の高級感、おしゃれ感をかもし出すことに腐心しているのであった。セレブを含む客の英国人は、この雰囲気をたのしむために、ハッキリ言って味的には「いかがなものいか」感の漂いまくるこのレストランに大枚をはたいているという仕組みなのである。しかがって、オレのような外人からすれば、インド人の英語が分からないのと同様に、このフランス人給仕の言っている英語の内容がまったくよくわからないという事態に陥ってしまうのであった。銀行の電話サービス窓口と違って、一方があからさまに分かりづらく話そうとしているわけだから、こちらは更に始末にわるい。

もっともこれは、おフランスに対する憧憬を隠し切れない英国人の弱点と言ってしまってもよいだろう。本来仲の悪い国同士で、お互い相手をバカにする悪口には事欠かないのだが、なんだかんだいって最終的にイギリス人はフランスに対する憧れの部分を隠しきれない宿命を持っているようだ。まあ、オレは単なる東洋の未開人なので、ミソもクソもイギリス人もフランス人も一緒だ。なんでもいいから分かりやすく話してくれよ、と純粋に思う。

さて、そういった英国人のフランスに対する憧れをあらためて思い出したのは、先日の Great Escape ('10) で最近売り出し中のフランス人バンド Pony Pony Run Run を観たときののことである。www.myspace.com/ponyponyrunrun

実は彼らのことは3年ほど前から良く知っていて、もちろんそんなに気になる連中ではなかったのだが、オレがパリに移ってから Fleche d'Or その他のライブハウスに英国バンドを観にいくと、かなりの確率で頻繁に前座をやっていたのを片目で眺めていたからだ。そんなに伸びてくる連中とも思えなかったが、昨年から今年にかけてシングル曲 [Hey You] (英語の歌)が地元フランスで大ブレーク。連日ラジオでヘビーローテーションの人気者となっていた。いまや Phoenix に続け!とばかりに盛り上がっているバンドに成長してきたのである。まあそんなわけでせっかく「地元」のよしみもあるし、バンドのショーケースイベントでどれくらい通用しているかを見るためと、ちょっとばかり応援してあげようとおもって彼らの出演する会場まで足を運んでみたのであった。

会場に入ってみると、まわりでちらほらフランス語の会話が聞こえてきた。そうか、英国在住のフランス人たちも観に来ているわけね、と思いかけたがどうも様子が変だ。「フランス語」が聞こえると言っても、「ぼんじゅーる」とか「とれびあーん」とか子供だましのような単語ばかりだ。もしやと思ったら、そういった会話や発言の源は英国人観客のようだ。そしてバンドメンバーがセッティングのためにステージで作業をし始めると、観客フロア奥のPAスタッフにいろいろフランス語で会話をしだしたぞ。それを観客の英人婦女子のみんさんは、そのフランス語をなぞるように復唱(のマネ)をしながらうっとり眺めているではないか!やはり本物のフランス語をはなすムッシューの威力おそるべし、といったところか。

そして演奏が始まり盛り上がりの中で [Hey You] が演奏されると、観客の皆さんは『♪Hey You!』のくだりで大合唱だ。もちろんいうまでもなく、「ヘイ・ユー」ではなくて「エイ・ユー」だけどな、全員。

「エイ・ユー」はフランスのラジオで聴いて十分知っていたわけだが、英国人にもバッチリアピールしましたな。このバンドがこの日のステージ上であからさまに聞こえるように使う仲間うちフランス語会話(彼らは皆若者なので英語は流暢)を聞いていると、ステージから観客に向かっては英語で話しながらも、英国人観客に「フランス語」が絶大なる効果を示すことを知り抜いているようだ。

イギリス人、とりあえずもてあそばれているような印象もないわけではないが、バンドなりの必死の戦略ともいえる。英国でも売れるといいね。いまやフランスではチケットがソールドアウトのバンドになってしまったので、ブライトンで気軽に見られたのは得したってことなんでしょうか?

Pprr

@ The Freebutt

ちなみに、フランスのラジオ局DJが彼らを紹介するときは、英語読みの「ポニーポニーランラン」ではなくて、「プニプニランラン」にしか聞こえません。日本におけるフランス語の弱点がもろに出た好例といえよう。

●ににさん、いつもコメントありがとうございます。

そうなんですよ、彼ら (We Are The Physics) ひさしぶりにロンドンで演奏するんですよね。実はその夜はThomas (Tom) White のチケットを買ってあって、テムズ川の南側に行く予定です。どうしても今彼を観たい、というものでもないのですが、ハッキリいうとこのブログネタのためです。さいきんライブ道もだいぶ動機がよこしまになってきましたが、「うわーつまんねーやっぱりフィジクスいっとけばよかったー」と後悔してしてしまうのも、ライブ道修行になるのではないかと瞑想中です。荒行すぎますが。

でも、彼らのライブぜひ楽しんできてください。観ていて楽しめるだけでなく、応援もしてあげたくなってしまう方々です。あとちょっとだけ真剣に行く末も心配しているので、万が一にも「負」のオーラを感じてしまうような事態があったら、ぜひ教えてください。

期せずしてライブ道初の「予告編」になり、失礼しました。

●ににさん、We Are The Physics いかがだったでしょうか?当方はTom氏の演奏を見終えて帰ってきたところです。まったく予想を超えた、驚くべきものだったので、慎重に筆を進めたいとかんがえております。

●ににさん、We Are The Physics 楽しんでもらえたようですね。なにより、彼らからネガティブな念波が発せられていなかったいうことで、本当にほっとしました。次回は応援に駆けつけたいものです。ところで、Tom氏はともかく、当日のメインアクトはわたしの苦手なザ・フラテリスのお兄さんがやってるサイドプロジェクトでした。まあ、トム・ホワイトだけ観にいったので、おまけだったのですが。まったく偶然ながら彼(ジョン・フラテリ)を椅子席の一番前で見る、という経験はロッキー・ホラー・ショーを観にいったあとのように、トラウマになりそうです。

« Silver Columns | トップページ | The Lotus Eaters »

音楽」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。Pony Pony Run Run、フランス人の友達に聞いたら結構人気あるみたいですね。うーん、私はPheonixだけでお腹一杯です。
ところでいつもちょっとズレた話になりすみませんが、We are the physics、今週土曜にBuffalo barでライブですね。こちらのブログで知り、ああ見てみたいと思いつつ、見たことがなかったので。。初めて見に行くので楽しみです。Funga77さんは行かれますか?

初の「予告編」ありがとうございます。Tom氏のライブレポ、楽しみにしてますね。
私の知人も、彼らはレーベルに生殺しにされて2年間何もできず、本当ならもっと売れてるはずのかわいそうな人たちなんだよ、と教えてくれ、応援にも力が入りそうです。Myspaceで「何時に出るん?」と聞きましたら律儀に「イングランド戦があるからね、多分その後だけどわかったらすぐに教えるよ!」と言ってくれました。好感度大ですね。
それでは何か負のオーラを感じたらレポいたします。w

こんばんは、わたくしもWe are the physicsを見終えササっと帰って参りました。いやー、やはり評判通りとても情熱的なステージでよかったです!ボーカルのMichael君の表情や指差しのひとつひとつ、いい味出てますね。曲名はかわりませんが曲間にデジカメで記念撮影していて、エンターテイナーさん達ですなあと思いました。
Michael君には「初めて見たけどサイコーだったよ!」と伝えておきました。今は新しいアルバムを作っている最中だそうで。負のオーラは特に感じませんでしたので大丈夫ではないでしょうか?彼ら、見た目からしてとても若そうなのでぜひ向こう2年位の間にもっと認知度が上がるといいですね。
Tom氏の予想を超えたGigレポお待ちしてます。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/460350/34966626

この記事へのトラックバック一覧です: Pony Pony Run Run:

« Silver Columns | トップページ | The Lotus Eaters »

フォト
無料ブログはココログ
2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31