« 2010年7月 | トップページ | 2011年9月 »

2010年8月

2010年8月 9日 (月)

Veronica Falls

< 2010. 07. 24 @ The 1-2-3-4 Shoreditch Festival, London >

さて、興奮のサッカー・ワールドカップが終了してからはや半月以上が経過した。

ご存知の通りイングランドチームは不本意な結果におわり、優勝争いにはまったく絡めなかったわけだが、われわれ日本人から見ても岡田ジャパンが涙の敗退をする以前に消えてしまったイングランドチームの存在など、もはやなかったことになっているのかもしれない。

イングランドチームの不吉な予兆は最初の試合にあった。「負けるはずのない」対アメリカ戦でまさかの引き分け。オレはその様子をロンドン中心部のパブリック・ビューに混ざってビール観戦していたわけだが、キーパーの後逸、そして試合終了ホイッスルの瞬間、集まった大衆の絶望的なうなり声とためいきは、もはやこの世の終わりを思わせるほど悲壮感にさいなまれたものであったことを生々しく思い出す。当然勝つべきはずのアメリカ相手に善戦をゆるしたこと。この事実がその後の結果のすべてにつながってくるかもしれないことを、観客たちは胸騒ぎしたにちがいない。そしてそれはほぼ現実のものとなってしまった。

ところでこの対アメリカ戦がおこなわれる日の朝、オレはロンドン市内でBBCのニュースを見ていたのだが、当然ながら国中が応援一色に染まっている様子が次々とレポートされていた。イキナリ見覚えのある顔が出てきたと思ったら、 We Are Scientists のキースとクリスの二人組のインタビュー映像だ。秀作のワールドカップ・イングランド応援歌をこしらえた彼らアメリカ人ミュージシャンにBBCの記者は問う。「今夜の試合ですけど、アメリカとイングランドのどっちを応援するんですか?」 彼らの答えはいうまでもなく、「ナニいってんだ、あんた?アメリカごときが我らイングランドに勝つはずないべ・・。」

思えば2006年に彼らがブレークするきっかけとなった場所こそがUKマーケットであり、彼らお得意ののジョークもイギリス人にぴったりだったのかもしれない(つい最近もNMEで We Are Scientists への「お笑い質問コーナー」の大特集あり)。イギリスは彼らのようなアメリカ人ミュージシャンを拾って救った国であるともいえるだろう。だからこそこの国に愛着がわいているのに違いない。彼らは数多くいるそういった「アメリカ産英国育ち」ミュージシャンの代表のひとつに違いないのだが、実は逆に考えれば、イギリスこそが彼らアメリカ人に助けられている、という言い方はできないだろうか?

ここ最近、アメリカンバンドのUKにおける影響のひろがりはめざましく、一方それは純粋な英国バンドの不調と表裏一体となっている。たとえば、今年の話題をほぼ独占しているバンドが The Drums であることにはほぼ異論がないだろう。単独公演とフェスティバルとで目にしたが、楽曲・ライブパフォーマンス・ステージ上での礼儀正しさ、とあらゆる点で高得点のまったくスキのない連中だ。NMEの表紙で取り上げられた週には、同誌から「ベスト・ブリティッシュ・バンド・フロム・アメリカ」とまで言い切られる始末だ。ちなみに同号にはアメリカ特集が組まれており、最近の傾向を反映して、有望な多くのアメリカ出身バンドが紹介されていた。

今年の上半期に自分が英国で観たライブを思い出しても、こころに残るステージを披露してくれたバンドを指折り数えると、The Drums はいうまでもなく、先日のエントリーでもすこし触れた Dirty Projectors や Local Natives、それに加えて Beach House、Avi Buffalo、Real Estate、Here We Go Magic、War Paint、Best Coast、Surfer Blood、Girls、Still Flyin'、などなどといった、アメリカン・ドリームの素敵なヤツらばかりが名を連ねる結果とあいなってしまうわけである。そうだ、新人さんではないけど Hold Steady のステージには魂を洗われましたよ、まったく。ビジュアルでお前たちに勝てるバンドは、21世紀中には絶対にでてこないことだろう。

一方の英国ご当地バンドはどうか?話題の Egyptian Hip Hop なども念のため2回ほどステージを覗いてみたが、音源で聴くならばともかく、ライブはけっこうキツイ。おとなの(オヤジの、というか音楽ファンの)鑑賞には堪えられない物件であった。これは真剣にヤバくねか、おマエらイギリス人?外タレさんに頼らないと、ちょっときわどいところまで来てるんではないか、とオレは問いたいわけである。もちろん問い質して責めたいわけでは全然なくて、なんとかがんばってほしいだけなのであるが。

さて、そんなわけでオレは有望な英国バンドの新人さんをさがしに、そういった連中が集まりそうな気配をかもし出す、ロンドンはショーディッチの公園で開かれる都市型の小型フェスティバルに今年は足を運んでみたのであった。ただいま売り出し中のバンドからまったくのニューカマーまで、ベテランのゲストを含めると総勢80バンド以上が勢ぞろいだ。晴天にめぐまれ、絶好の屋外イベント日和である。コンパクトなレイアウトの会場にはステージが4つ。満遍なく移動しやすいので、極端に言えばすべてのバンドの姿を観るのも可能といえる。オレは気になるラインナップをできるだけ数多くチェックするべく、ビールを片手に会場内をぐるぐるとまわり続けた。

ところが期待に反して、なかなか「及第点」をかるくクリア、という案件にはでくわさない。ここでもやはり琴線に触れるライブパフォーマンスを見せてくれたのは、Dum Dum Girls というキャーリフォルニャァ出身のお姐さんたちだった。だれか・・・だれがオレを驚かせてくれるイギリス人はいないのか?ちなみにピーター・フック氏(&バンド)がゲストステージを努めていたのだが、まあ [Love Will Tear Us Apart] を演奏するのはよし、としよう。一応 ジョイ・ディビジョンのメンバーだったんだし。そこで当人がボーカルを務めるのもギリギリ許そう。だがしかしだ。その名曲でこぶしを振り上げ絶叫しまくりながら、全編「ウウァオー!!」と歌うのはアリか!? なあ、オヤジ?故人のバンドメイトに対してはもちろん、ここに来ている観客に対してそもそも失礼ではないのか、それは?というわけで、それはそれで真剣に驚かせていただきました。

それだけではない、最初からアメリカとの戦いを放棄しているとしか思えないような仕打ちはエスカレートしていった。ボビー・ギレスピー、グレン・マトロックそしてザック・スターキーらによる一晩限りのライブユニット、 The Silver Machine という余興バンドにいたっては The Troggs など往年の名曲をカバーするためのバンド、ようするにパブで仲間内でだけ盛り上がっていてもらいたい、といったような企画モノである。オレは当然ながらこれを無視することとし、別なステージで演奏中のアメリカン・スピリット Vivian Gilrs を堪能させていただいたわけである。

オレはそもそもアメリカ対イギリスの対決を評価するためにここに来たのではない。有望そうな地元の連中を探そうとしているだけなのである。しかしながら、一応はロンドンの若者文化の中心ということになっているこのショーディッチのイベントで、客寄せの柱となっているのがボビー・ギレスピーの座興バンド、ということでは、何の発信力もないタダの休日の暇つぶしだ。それはそれでまあよしとしても、結果的にアメリカからのゲストに完敗前提のこのオーガナイズは敗北主義と呼ぶべきか、それともさびしい現実と捉えるべきなのか。

そんなことを思っているうちに日も暮れてきた。メインステージでトリをつとめるカナダのバンドだけすこし眺めてから家路につこう、と考えたそのときだった。ふと見た「新人バンド」のテントに人だかりができている。するするっと中に入り込んで、会場中ほどのポジションを確保した。その日いちにちを通しての経験からさしたる期待も抱かず眺めたこのバンドが、実は最後の最後で大当たりだったのである。Veronica Fallswww.myspace.com/veronicafallshard  旋律そして音質と、オレのお気に入りのイギリスらしい音を聴かせてくれるスコットランドの新人さんであった。現在 iTune で3曲ほど購入し、アタマですっかりループしているところである。

この連中に出会わなければこの日のイベントは、とてもイギリスのフェスティバル会場で売っているものとは思えないほどおいしかった焼き立てのピザと、そしてやっぱり今のイギリスの音楽シーンはアメリカ人によって助けられ支えられている、という思いを新たにしただけにすぎなかったことだろう。しかしピザに限らず、イギリス人やればできるじゃないか!と今は言いたい。イギリスらしい音、いや「イギリス」マーケット、という方が正確かもしれないがそこにしっくりする音。オレの好きなそんな音を出してくれる新人のライブステージに出会えて、すこしだけホッとしてから帰り支度を始めた。

そういえば、前述のHMEでのインタビューで The Drums のメンバーがこう発言していた。「たとえば、 The Field Mice が世界一のバンドだった、ってことがあってもいいわけだよね?」

The Field Mice はオレが1988-89年ころ、圧倒的に好きだった、いうまでもなくイギリスのバンドだ。いや、バンドが好き、というよりはその「音」が「これこれ。まさにコレだよ!」という連中である。The Drums の発言は、彼らが最も影響を受けたに違いないこのバンドを引き合いに出して、でも自分たちは同じように優れた音楽を作りながら、成功もおさめてみせる、という自信の表れかもしれない。

オレ自身は、The Drums が今後どの程度のビッグなサクセスを手に入れるかどうかにはあまり興味がないが、いつの時代にも彼らや、そして The Field Mice、さらには Veronica Falls のような音を聞かせてくれる連中がいてくれればそれでよい。そして、それがライブで観続けられればなおよし、である。

ただ、できれば本家のイギリス人の方が不調を脱して活躍してくれると、もうすこしだけうれしいのではあるが。サッカーの話じゃないよ。

Vf

@ The 1-2-3-4 Shoreditch Festival

足がすくみますね、Beachy Head (英国南東部の切り立ったガケ)。わたしがイギリスで一番キライな場所です。夢に出るよ。

画像は動かないけど、名曲。昔のオレは「ライブ道」ではなくて「7インチシングル道」だったので、せっせと買い集めてました。

画像として人に見せる価値があるがどうかは分からないけど、怪作。なんだかドラムは見覚えのあるイギリス人のようですな。ご参考に。

●Kannouさま

コメント並びに応援、ありがとうございます。ライブ道の修行は続けております。近いうちに山を降りて説法にまわりたいと考えているのですが・・・。

実はいま、Reading Festival (2011・三日目最終日)に来ております、というか会場から民宿まで戻ってきたところです。曇天と寒さのため、PM4時には会場を後にしました。早退の新記録です。寄る年波には勝てないものですね。

« 2010年7月 | トップページ | 2011年9月 »

フォト
無料ブログはココログ
2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31